芙蓉の書-成均館スキャンダル屋根部屋のプリンス3days二次小説

JYJユチョン主演の韓国ドラマドラマ「トキメキ☆成均館スキャンダル」「屋根部屋のプリンス」「スリーデイズ(3days)」の二次小説ブログです。
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【テーマ】

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【屋根部屋 二次小説】雨降りの夜は - 1  

屋根部屋のプリンス連載

夕立の中、パク・ハが雨を無視して傘も持たずに走ったのは、午後四時。
午後四時半。
今は、頭から爪先まで濡れそぼった体を、商業ビルの軒下で温めようとしている。
温めたいのだが、通り雨だと思った雨は本降りに変わって、空気をさらにひんやりとさせるだけで、止む気配はない。
雨が降るとは、思いも寄らなかった。
銀行の引き落としやら、役所の手続きやら。金曜日の内に終わらせてしまいたいちょっとした用事を済ませに街に出た時は、晴天だった。
多少濡れたって構わない、バス停まで走ってしまえばこちらのものだと駈け出したのが運の尽き。
バス停に辿り着く前に下着まで染み込んでしまった雨水に観念して、立派なエントランスを備えるビルに飛び込んだ。
飛び込んだ当初、パク・ハのように困り顔で空を見上げる人は、少なくなかった。
彼らは、携帯電話で誰かを呼び出したり、ビルの中の雑貨屋で傘を買ったり、それぞれの方法でこの天気に対応して、去って行った。
気づけば、誰かに助けを呼ぶことも、雑貨屋に入ることも出来ずに、三十分ただただこの場所に一人で立っている。
パク・ハは胸にバッグを抱きしめて、じりじりと後退した。
晴天に気を良くして薄着で家を出たのが仇となった。
雨水が染み込んだ水色のカットソーは、ブラの模様まで、しっかりと透かしていた。
こんな姿では、バスやタクシーにも乗れない。
あの四人を呼び出すのは憚られた。
臣下の三人は、尚更だ。
今のこの姿で、彼らの前に立つなんて、とんでもない。
イ・ガクも、暇なわけではないのだ。
こちらの不注意のせいで手を煩わせるような身勝手は避けたいし、やはりこんな姿を見せ難い。
彼は、この体を知らないわけではないのだけど。
腕時計をちらりと見やると、針は四時三十七分を指していた。
「七分経過」
さて、どうしよう。もういっその事、濡れながら歩いて帰ろうか。
パク・ハは溜め息とともに、また空を伺った。



「今、何をしているのだ?今宵は皆でサムギョプサルを食べる。チサンが店を手配するから、夕餉の支度は必要ない」
イ・ガクからの電話は、パク・ハが十五分経過、とカウントした直後だった。
彼は、一方的に用件を伝えて、パク・ハの返答を待っている。
「傘を忘れて、雨宿りしてるの」
タクシーで帰らないのかと、彼は電話の向こうで不思議そうな声を出した。
タクシーに乗れない理由は言い難い。
「三人は、どこにいるの?」
屋根部屋にいるとの返答に、パク・ハは驚く。
「まだ、定時じゃないでしょ?」
三人は下っ端扱いだが、自由に動くイ・ガクに合わせて彼らも行動する。
今日は早々に仕事を切り上げる予定のイ・ガクより一足先に、帰ったのだと言う。
「私も帰るから、そなたを迎えに行こう」
「えっと、傘を持ってきてくれたら自分で帰れる、かな」
「訳の分からないことを申すでない」
確かに、理由を言わなければ、おかしな話だ。
イ・ガクは、そこで待つのだと念を押して、電話を切った。
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【作品名】雨降りの夜は

【テーマ】 屋根部屋のプリンス二次小説  イ・ガク×パク・ハ 

2015/03/06 Fri. 20:53  tb: 0   コメント: 2

【屋根部屋 二次小説】雨降りの夜は - 2  

屋根部屋のプリンス連載

何となく心細いのは、きっと、イ・ガクが迎えに来るからだ。
電話を貰う前、一人で空を見上げていた時は何も思わなかったのに、耳元でイ・ガクの体温を感じた途端、心許なくなった。
強く打ち付ける雨が地面で跳ね返って白く曇る様が、益々一人この場に取り残された気分を煽る。
「早く来ないかな」
下着があらわになった姿なんか見せたくないとは思うけれど。
イ・ガクがここに来たら、得意そうに笑うんだろうか。
早くその顔が見たい。



「あ、来た」
現代生活にすっかり溶け込んだイ・ガクは、愛車をビルのエントランスに難なく着けた。
その横顔は、やはり、得意そうな笑顔だ。
大方、この私がわざわざ迎えに来てやったのだ、ぐらいに思っているのだ。
世が世なら、王世子自ら迎えに来るなんてあり得ないよね、とパク・ハの口元も、自然に綻ぶ。
恩着せがましいことを言おうとしたのだろう、助手席に乗り込んだパク・ハに向き合ったイ・ガクは、しかし、目を見張った。
「ずぶ濡れではないか」
風呂あがりのように髪まで濡らした姿は、インパクトがあったらしい。
急いで帰らねばと、サイドブレーキのレバーに右手を乗せる。
パク・ハはその右腕を引っ張った。
「待って。そのジャケットを貸してくれない?」
「寒いのか?」
イ・ガクはシートベルトを外して、窮屈そうに黒色のジャケットから腕を抜いた。
そして、ほら、とジャケットを差し出して、しかしすぐにそれを引っ込めた。
気難しそうに顎を上げている。
「これを着るのであろう?荷物を後ろに置いたらどうだ」
パク・ハが胸の前で固くバッグを抱き締めて首を横に振ると、イ・ガクは呆れた声を出す。
「先程から、そなたは言うこと成すこと、おかし過ぎる」
「いいから、ジャケットを貸して」
「荷物を後ろに置いてからだ。幼子でもあるまいし、順序もわからぬのか?」
「いいから貸してよ」
バッグを抱いて、透けた下着を何とか隠しているのだ。
後ろにこのバッグを置いたら、丸見えになってしまう。
確かに、イ・ガクが言う通りこの振る舞いは挙動不審だが、ジャケットぐらい好きに着させて欲しい。
「パッカ!」
こんな些細な事でも言うことを聞かせたがるイ・ガクは、一歩も譲る気配がない。
こちらに身を乗り出し、バッグを取り上げようと腕を伸ばされて、パク・ハはとっさに背を向けた。
「駄目!」
それでも取り上げられると思った。肩を押し戻されて、無理やりに。
けれど、固く身構えたこの体に触れる手はやってこない。
代わりに、さっきの怒鳴っていた時の威勢の良い声とは全然違う、掠れた呟きが聞こえた。
「そなた……」
イ・ガクは、見たのだ。
前はブラの模様まで見えるのだから、背中の紐だって、透けているはずだ。
居たたまれなくなって、外を見た。
けれど、窓に打ち付ける雨がガラスの上で広がって、外の景色は見えない。
空の灰色とアスファルトの灰色がぼんやり映るだけだ。
ワイパーのゴムが、フロントガラスの上を滑る規則正しい摩擦音が、車内に響いている。
不意に、視界が真っ暗になった。
ジャケットを頭から被された。
パク・ハは、やっと与えられたジャケットに、背中を向けたまま袖を通す。
パク・ハがジャケットを着たのを見届けてから、イ・ガクはサイドブレーキを下ろした。
「出よう」
ちらりと横を見やると、彼は真っ直ぐ前を向いている。
だが、ハンドルを握る左手が、狼狽えている。
キーボードを叩くように、指がぱらぱらとハンドルを打った。




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【作品名】雨降りの夜は

【テーマ】 屋根部屋のプリンス二次小説  イ・ガク×パク・ハ 

2015/03/07 Sat. 18:26  tb: 0   コメント: 0

【屋根部屋 二次小説】雨降りの夜は - 3  

屋根部屋のプリンス連載

雨の中を滑るように進む車内に、会話はなかった。
タイヤが水溜りを跳ねる音や、時計の秒針のように規則正しいウィンカーの機械音、鈍く響くエンジンの音、沢山の音が車内に溢れているのに静かな空気が重いと感じるのは、イ・ガクが、呼吸すら止めているのかと思うほど、音をたてないからだ。
「ありがとう」
迎えに来てくれたことも、ジャケットを貸してくれたことにも、まだお礼を言っていなかったことに思い至って、パク・ハは口を開いた。
このジャケットがあれば、家で三人に下着を晒す心配もない。
「ああ」
相変わらず、イ・ガクの左手は落ち着かなかった。
四本の長い指が、小さくハンドルを叩いている。
「チサンは、どこのお店を予約したのかな?この雨なら、車で行ったほうがいいよね」
「ん」
低い声で、短い返事。こんなにあからさまに態度を変えられてしまったら、こちらの身の置き場がない。
ついさっき、バッグを後ろに置けと迫ったように、怒ればいいのだ。
強気で攻め立てたのだから、今だって、傘を持たずに出て浅はかだとか、下着を透けさせて淫らだとか、好き勝手説教すればいい。
「ジャケットも湿っちゃった。クリーニングに出して返すね」
「ああ」
また、短い返事。本当に、調子が狂う。
外の湿気を取り込んだ車内は、息苦しい。
薄っすらと曇った窓ガラスが二人を閉じ込めているようだった。



チサンが予約した店に向かっているんだろうか。窓の外を流れる景色は見知ったものだが、家への帰路ではない。
家に帰れないのは、正直困る。
着替えて濡れた体も乾かしたいし、髪も濡れてぼさぼさだ。
だが「うん」や「ああ」しか言わないイ・ガクに、これ以上話しかけられなかった。
だからパク・ハは、どうしようと、考えを巡らせる。
繁華街のお店なら、近くに適当な服屋もあるだろうし、安いトレーナーでも買ってしまえば、なんとかなる気がする。
髪は気になるが、エアコンの風を当てれば表面は乾くかもしれない。
その上でポニーテールにしてしまえば、見苦しくないはずだ。
バッグの中のポーチを漁って、ヘアゴムを見つけ、安堵する。
ダッシュボードのエアコンパネルに冷えた指先を伸ばした。
強い風がエアコン口から吹き出す。
パク・ハの髪を揺らすと同時に、窓ガラスの内側に薄っすらと広がった水滴も、乾かしていった。



左折レーンに入って、車は停止した。
絶えずハンドルを叩いていたイ・ガクの指も、止まった。
意識してしまうなら見なければいいのに、パク・ハの目は、長い指の行き先を追ってしまう。
ハンドルから離れた指が、シャツの第二ボタンを外した。
片手で器用にボタンを外した後、また左手はハンドルに戻る。
白い襟が開いて露わになった喉仏を、直視できなかった。
慌てて視線を上に逃がして、パク・ハは息を呑む。
あからさまな男の色を乗せた横顔が、そこにあった。

早く、お店に着いて。

カチカチと響くウインカーの音と、行き交う車のタイヤが水を切る音が、やけに耳につく。
イ・ガクは何も言わない。何もしない。
なのに、エアコンで湿度が下がったはずの車内が。
息苦しい。




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【作品名】雨降りの夜は

【テーマ】 屋根部屋のプリンス二次小説  イ・ガク×パク・ハ 

2015/03/08 Sun. 18:14  tb: 0   コメント: 4

【屋根部屋 二次小説】雨降りの夜は - 4  

屋根部屋のプリンス連載

左折をした後に車が滑り込んだ場所は、繁華街でもサムギョプサル店でもなかった。
シャンデリアが光る重厚なエントランスの回転ドアの前に立ったドアボーイが二人、こちらに気づいて歩き出す。
二人は、運転席と助士席のドアを同時に開けた。
外から入った湿った空気が、ふくらはぎにまとわりつく。
イ・ガクは車のキーをボーイに預けて、助手席で固まっているパク・ハを一瞥した。
「そなたも降りろ」
ドアに手を掛けたボーイが柔らかく微笑んでいる。
濡れ雑巾のような姿で高級ホテルに入りたくない。パク・ハの頭に浮かんだのは、エントランスで情けない姿を晒すことへの抵抗だったが、イ・ガクは助士席やって来て、パク・ハの右腕を取った。
「降りるのだ」
なすがままに回転ドアを通り抜ける。
すっかり小さくなっているこちらにはお構いなしで、腕を掴んだまま、カウンターまで進んでしまう。
イ・ガクは、いつの間に、こんなに手際が良くなったのだろう。
高級ホテルに予約せずに訪れて、スマートに部屋を取っている。
現代に生まれた自分は、この重厚な雰囲気に気後れしてしまいそうなのに。
逃げ出すとでも思っているのか、イ・ガクの左手は、ずっとパク・ハの右腕を掴んでいる。
本音を言えば、逃げ出したい。
せめて、この姿でも目立たないロビーの隅っこでもいいから。
フロントの女性のプロらしい笑顔も、パク・ハをいたたまれない気持ちにさせた。



部屋を案内すると言ってエレベーターを一緒に待つホテルマンに、イ・ガクは必要ないと断った。
ホテルマンが去ると同時にエレベーターが開いて、イ・ガクの手はパク・ハの腕から離れた。
イ・ガクに続いてエレベーターに足を入れる。
扉と向かい合った彼と目を合わせずに壁際にじりじりと後退した。
「家で着替えられる」
「その姿を、あの者たちに見せるのか?」
また、低い声だ。
馬鹿者とか無礼者とか人を罵るのが得意なんだから、声を張り上げて怒ればいいのに。
「でも、このジャケットを着ていれば、わからないでしょ」
「馬鹿を申すでない」
パク・ハの腕から外された手は、後ろで組まれている。

もっと、大きい声出してよ。

気持ちが伝わったのか、イ・ガクはちらりとこちらに視線を寄越した。
途端に重たい雰囲気に飲み込まれそうになって、パク・ハは俯く。
彼の視線が持つこの熱を、知っている。
パク・ハの服を一枚一枚剥ぐ時と同じ熱を持った、目。
エレベーターのディスプレイは数字をどんどん上げていくけれど、止まる気配は、まだない。
窓がないせいだろうか。車内よりもずっと重い空気が、息苦しい。



エレベーターを降りて踏みしめた廊下の厚いカーペットは、疲れた足の裏に柔らかかったが、靴の中まで入り込んだ水が歩くたびに浮くから、気持ちが悪い。
肌に張り付いたこの服も早く脱いでしまいたい。
シャワーだって浴びたい。
だが、ベッドがある部屋でシャワーを浴びるなんて、そういう風にしか考えられないから、もう文句の言葉すら思い浮かばない。
ドアロックにカードキーを差し込むイ・ガクの手は何の迷いもない。
大きな背中がドアに吸い込まれて、こんなの無理だと思うのに、足は導かれるようにイ・ガクに続いて部屋に入る。
後ろでがちゃりとロックがかかる音がして、パク・ハの肩が揺れた。
「湯浴みを」
振り返ったイ・ガクは、ぼそりと言って、部屋の奥に消えた。




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【作品名】雨降りの夜は

【テーマ】 屋根部屋のプリンス二次小説  イ・ガク×パク・ハ 

2015/03/10 Tue. 16:45  tb: 0   コメント: 2

【屋根部屋 二次小説】雨降りの夜は - 5  

屋根部屋のプリンス連載

パク・ハは、クローゼットからバスローブとクリーニング用の巾着袋を出して、バスルームに引っ込んだ。
鏡にうつる顔は、すっかりイ・ガクの雰囲気に当てられて、火照っている。
けれど、彼は果たして“そういう”つもりなのか、量れない。
この後、みんなでサムギョプサルを食べるのだし、濡れた体を乾かすためにこの部屋を取ってくれたのだとしたら、クリーニングが終わったら部屋を出るだけのこと。
だから、突然のこんな展開にどぎまぎしている自分が、意識しすぎているのかもしれない。



パク・ハは、頭からシャワーのお湯をかぶった。
言葉少ななイ・ガクに振り回されて、まだ何も言われていないのに“そういうこと”にとらわれてしまっているのだから、もう完全に恋の病の末期である。
イ・ガクは、この体を知っている。
二人がキスをした後、彼は決して手を出さなかった。迫ったのはパク・ハだ。
初めは、もしかしたらこちらが思うよりイ・ガクの想いは深くないのではと疑ってしまうほど、頑なに拒まれた。
まるで逆の意味だと知って、それから二人でベッドに沈んだ後は、何度か彼はこの体を開いた。
しかし、明るい内に求められたことは、ない。
現に、求められていないのかもしれないけれど。
「ああ、もう!」
違うかも、違うはずだ、と思いつつ、丁寧に体を洗ってしまう自分が恨めしい。
それに気付いて、パク・ハは腕を強く擦った。

大体、触られてもいないし。

強引に腕を引っ張られたことを除けば、イ・ガクはパク・ハとそれなりの距離を保っていた。
「そうよ、考え過ぎよ。みんなとご飯食べるんだし」
シャワーヘッドから勢い良く出る水流が体の泡を一気に洗い流す。
洗面台に置いたバスローブをさっと着こみ、タオルで乱暴に髪を拭いた。
まだ雫が滴っているが、髪をいつまでも拭いているのももどかしくて、ドライヤーの熱風をびしょ濡れの髪に吹き付ける。
こんな時、バスルームは艶かしい意味合いを孕む。
だから、ここにいることで、勝手に火照る体が、更に煽られている。
そう思うことにした。



バスルームを出て、忍び足で部屋の奥へ進むと、イ・ガクはソファーに座っていた。
何でこそこそしちゃうのよ。心の中で突っ込んでみたところで、堂々と歩けなかった。
バスローブ一枚しかこの体を覆うものはなくて、いくら否定しても“そんなこと”の可能性が頭から離れなくて、自然に体が縮こまってしまう。
間接照明の頼りない光が包む部屋は、薄暗かった。
窓から差し込む陽光も、分厚い雲に覆われている今日の灰色の空では期待できない。

また、その目。

薄暗い室内で黙って座るイ・ガクが、パク・ハを見てすぐに視線を逸らした。
視線をぶつけたパク・ハの頬に、あの熱を残して。
「シャワー、終わった」
「ああ」
「クリーニング、頼むね」
「ああ」
パク・ハが部屋に備え付けられた電話の受話器を取って、フロントに急ぎの手配を依頼すると、電話口の女性は快く応じてくれた。
逃げるようにバスルームに戻り、巾着袋に服を詰め込む。
ちらりと鏡を見ると、イ・ガクの熱が残ったままの頬が赤く蒸気していて、嫌になる。
頬に手をやり、なんだか目も潤んできているんじゃないかと鏡を覗き込んだところで、その鏡にイ・ガクが映り込んで、慌てて手を外した。
「一時間ぐらいでクリーニング終わるって。ご飯に間に合うね」
「左様であるな」
イ・ガクの腕が伸びて、巾着袋を掴む。それから、その姿では宿の者に会えないだろう、と言い残してバスルームを出て行った。

ほら、やっぱり、すぐにこの部屋を出るんじゃない。

屋根部屋に落ちて来たその日から、イ・ガクには振り回されっぱなしだけれど、目線だとか手つきだとか、こんな小さな仕草にも翻弄されてしまう自分は、つくづく彼に嵌り過ぎているのだと、パク・ハは、再び頬に手を宛てて俯いた。




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【作品名】雨降りの夜は

【テーマ】 屋根部屋のプリンス二次小説  イ・ガク×パク・ハ 

2015/03/13 Fri. 16:24  tb: 0   コメント: 6

【屋根部屋 二次小説】雨降りの夜は - 最終話  

屋根部屋のプリンス連載

部屋の入口が閉まる音が響いて、パク・ハはバスルームから顔を出した。
入り口で服を預けて戻ってきたイ・ガクは、顔だけ出したパク・ハを横目で見やり、奥に戻れと言って通り過ぎる。
「はい」
勝手にイ・ガクの一挙手一投足にびくびくして、自分ばかりが相手の顔色を伺うのは不公平な気がするが、これが、先に好きになってしまった者の弱さである。
体を小さくしたまま後に続くと、彼は一人がけのソファーに腰を下ろし、顎で向かいの二人がけのソファーを示した。
おとなしく座っていろ、という意味なんだろう。
静かに腰掛けたはずが、分厚いクッションは、弾ませるようにパク・ハの体を持ち上げた。
パク・ハは内腿に力を入れて両足を閉じる。
バスローブの裾が、心許ない。
気を抜くと裾が開いて、太腿が露わになってしまいそうだ。
これでは、向こうにその気がないのに誘っているみたいだ。
手で裾を押さえても、冷気が入り込んでいるような、風が抜けているような感覚が脚全体にまとわりついて、収まりが悪い。
相変わらず薄暗い室内も、「やっぱり違う」から「もしかしたら」に引き戻されそうで、落ち着かなかった。
それに、この沈黙。
イ・ガクは、彼の手を煩わせたパク・ハに文句も言わないから、尚更に居心地が悪い。
「みんなは、私たちのこと待ってる?電話しなきゃ」
「必要ない。あの者たちが、私に連絡を寄越す」
この気まずさを断ち切りたかったが、イ・ガクの短い言葉が、パク・ハが見つけたソファーから立ち上がる理由を、あっさりと押し留めた。



また、イ・ガクの左手がぱらぱらと動き出した。
ソファーの肘当てに腕を預けて、指先だけを不規則に動かしている。
向かい合わせに座っているから時々目が合うが、イ・ガクは即座に視線をするっと横に流した。
そのたびに襟の奥の喉仏が上下に動いて、パク・ハもまた目を逸らす。
完全に、イ・ガクの妙な雰囲気に捕らえられてしまった。
迫られることを期待しているとか、そういうことではないのだけれど。
パク・ハは目のやり場に困り、部屋をぐるりと見回す。
イ・ガクばかりを目で追っていたせいで、何となく気づいていた程度だったが、彼はずいぶん立派な部屋を取ったようだ。
この部屋にどっしりと構えている、これも気まずさを助長させているベッドは、二人が座るソファーセットから少し距離がある。
その傍らには、別の部屋に続くらしいドアもある。
だが、この部屋を覆う空気はとても、立ち上がって奥の部屋を探検できるような軽いものではない。
室内の頼りない光は、頬の赤みを、縁が潤んだ瞼を隠してくれているのだろうか。
そっとイ・ガクを伺うと、目が合ってしまった。
ゆとりなく部屋を見回していた様子を、彼はきっと見ていた。
だから、逸そうとした。
イ・ガクだって逸らすと思ったのに、真っ直ぐ視線をぶつけられた。
睨んでいるのと変わらない両の瞳。けれど、睨んでいるんじゃない。
証拠に、頬にあの熱がまた移った。



イ・ガクが右手に持っていた携帯電話が震えた。
「チサンか。ああ、パッカは私と共におる」
電話を受けながら彼は立ち上がり、そのおかげでパク・ハを支配していた緊張が緩む。
しかし、肩の力が抜けたのもつかの間、イ・ガクはパク・ハの前に立って、彼女を見下ろした。
「チサン、私とパッカは行かぬから、三人で楽しむが良い」

――私に言ってる。

三人と合流しない、と言う意味がわからないほど初心じゃない。
イ・ガクがどんなつもりでこの部屋をとったのか、目を見て告げられて息を飲んだ。
「私とパッカは、明日まで帰らぬ」
イ・ガクが屈んで、視界が暗くなる。
携帯電話の向こうでチサンが何か早口で言っている。
「何度も言わせるな」
ゆっくりと近づいてくるイ・ガクの顔をぼうっと見返した。
近距離の視線はパク・ハの本心を暴かんとするかのようで、本心を暴かれてしまった体は、抗う力を失っている。
まだ電話は終わっていないのにバスローブの紐を引っ張る左手にも、成すがままだ。
車の中で生まれてしまった熱を、もう誤魔化せなかった。
イ・ガクは、初めからそのつもりだったのだ。
忙しなかった左指も、ベッドの中でしか見せない劣情を孕んだ双眸も、まるで隠していなかったのだから。
「今夜は帰らぬ」
低い声に、指一本動かせないほど、絡め取られる。
イ・ガクの右手からするりと落ちる携帯電話を目の端で追う隙もなく、パク・ハは熱に飲み込まれた。




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【作品名】雨降りの夜は

【テーマ】 屋根部屋のプリンス二次小説  イ・ガク×パク・ハ 

2015/03/16 Mon. 17:26  tb: 0   コメント: 10

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