芙蓉の書-成均館スキャンダル屋根部屋のプリンス3days二次小説

JYJユチョン主演の韓国ドラマドラマ「トキメキ☆成均館スキャンダル」「屋根部屋のプリンス」「スリーデイズ(3days)」の二次小説ブログです。
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> Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

Me And Those Dreamin' Eyes of Mine 一覧

【成均館 二次小説】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine - 1(パラレル)  

成均館スキャンダル連載

ドラマ版成均館スキャンダルの人物が登場する、現代パラレル二次小説です。ご注意下さい。

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ユニは大きく息を吸いこんだ。
「カナダの匂いがする!」
バンクーバー国際空港の到着ロビーの高窓から降り注ぐ明るい日差しや木製のトーテムポールが、彼女の鼓動を否応なく高めた。
長蛇の列だった入国審査と長時間のフライト、時差による倦怠感で体がふらふらだが、これから始まるカナダの留学生活を思うと、両頬は自然と上がる。
飛行機を降りた途端に雪崩れ込んできた英語の洪水にも、彼女は怖気づかなかった。
「どこかな?」
ユニは、迎えに来てくれているはずの母方の従兄弟のジェシンを探しながら、緑色のパスポートをリュックに仕舞う。
「ユニ!」
「ジェシンオッパ!」
「久しぶりだな」
ジェシンは、案外近くに立って、寝ぐせをほったらかしにした前髪の奥で、優しい瞳を細めていた。
ユニの背中をぽんと叩くと、彼女の大荷物を乗せたカートをぐいと押す。
「疲れたか?駐車場まで頑張れ」
「オッパ、全然疲れてないよ」
手ぶらになったユニは、跳ねるようにジェシンの後に続く。
彼女にとって、カナダでの学生生活はもちろん、兄同然に慕っているジェシンとの共同生活もまた、楽しみだった。



ジェシンとユニは、近所に暮らし、食事を共にすることも度々だった。
食事の後に、ジェシンがユニやユニの弟のユンシクの勉強を見てやり、そのまま三人で寝てしまうことも珍しくなかった。
ユニの父は彼女が幼い頃に亡くなった。
母、ユニ、ユンシクが悲しみに暮れていた時に手を差し伸べたのが、ユニの母の実兄ムン・グンスだ。
警察の幹部だった彼は、富豪というほど裕福ではないが、さりとて庶民でもなかったので、家族が三人増えても然程負担ではなく、よって、ユニの一家はムン・グンスの援助を受けながらの生活を始めた。
現在、ムン・グンスは治安総監まで上り詰めている。
高校時代、全国トップの成績を収めていたユニが、家庭の経済事情で大学進学をあきらめていると知った時、進学を後押ししたのも彼だ。
どうせなら英語も身に着けて来い、とジェシンのいるカナダでの留学を強く勧めた。
彼の息子ジェシンは、カナダのバンクーバーで学生生活を終え、就職したばかりだった。
父としては、早く帰国し警察組織に入れと口を酸っぱくして言い続けているのだが、こうと決めたら梃子でも動かない性格の息子だから、仕方がない。
ならば少しぐらい家族の役に立てと、ユニの面倒を持ちかけた。
もともと兄妹のように仲睦まじいジェシンとユニだ。
ジェシンは、喜んでその提案に乗った。



「バンクーバーオリンピックの時に、バンクーバー市内からスカイトレイン一本で空港まで来れるようになったんだ。今日は車だけど、一人でも空港まで簡単に来れるぞ」
駐車場で彼女の荷物をトランクに詰めながら、ジェシンはこれから彼女が過ごすことになるバンクーバーについて、話し始めた。
「スカイトレイン?」
「ああ、バンクーバーを走る無人のモノレール。オリンピックの前は、空港までの交通手段は、車かバスしかなくて、不便だった」
「へぇ」
「明日、スカイトレインの定期券を買おう」
いくら学業に燃え志高く入国したと言っても、初日は観光気分だ。
ユニは、駐車場の作りは韓国と同じだな、ときょろきょろと辺りを観察しながら、頷いた。
「車に乗れ」
彼女が助士席のドアに手をかけた時、隣のスペースに車が滑りこんできた。
車から降りてきた運転手は、ユニに早口で何かを言っている。
ジェシンがさっきまで使っていたカートを渡すと、運転手は礼を言ってそのカートに荷物を積み出した。
「カートを貸してくれって言ってたんだよ」
ジェシンが助士席にユニを押し込みながら言う。

カートを貸してくれって、絶対簡単な英語だよね?
うそ、早くて全然聞き取れない。

英語には自信があったのだが。
早くも異国の洗礼を受けたユニは、これから始まる英語生活への大志をますます強くした。




ジェシンオッパ!
キム・ユニ




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【作品名】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  花の四人衆 

2014/10/20 Mon. 16:42  tb: 0   コメント: 0

【成均館 二次小説】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine - 2(パラレル)  

成均館スキャンダル連載

ドラマ版成均館スキャンダルの人物が登場する、現代パラレル二次小説です。ご注意下さい。

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Main St(メインストリート)と書かれた看板の前で、ジェシンは一度車を止めた。
「ここがメインストリート。今から曲がる道がWest 22nd Avenue(ウエスト トウェンティセカンド アベニュー)。この道を入ったら、すぐ家だ。迷ったらメインストリートとトウェンティセカンドって話せば、地元の人は場所がわかる」
「うん」
「バンクーバーは碁盤の目みたいに道が走っているから、道が交差する場所を言えばいいんだ。あとで地図を確認しろよ」
「うん、オッパ」
メインストリートから数ブロック入った場所に、ジェシンがユニと暮らすために借りたという一軒家が立っていた。
外壁が黄色にペイントされた、こじんまりとした平屋だった。
ジェシンが車を止めた通りから家までの間に、芝生が短く刈られた庭が小さいながらも広がっている。
彼女の視線を遮断する塀はない。
庭のなだらかな傾斜の上に立つ家は、ユニが想像していた「外国の家」そのものだった。
「かわいい!」
「そうか?ヨンハが選んだからなぁ」
「ヨリム先輩が選んだの?オッパが住むところなのに?」
「俺が一人の時は、アパートだっただろ?お前が留学するって言ったら、張り切ってたよ。俺は、普通に住めれば、なんでもいい」
「オッパ、私、ヨリム先輩に会いたい」
「お前が呼ばなくても、あっちから来るよ」
「どこに住んでるの?」
「かなり近所だぞ」
ジェシンは、振り返って通りの先を指さした。
「あの家で、ホームステイしてる」
ユニがこれから暮らす家と違い、2階建ての大きな家が彼の指の先に立っていた。
「え?ヨリム先輩がホームステイ!?社会人でしょ?」
「どうせ後で押しかけてくるから、直接本人に聞いてみろ。ほら、入るぞ。靴脱げよ」
「へ?ふーん」
ユニにとって、履物ひとつとっても、新しい発見だ。
ハリウッド映画ではみんな室内で靴を履いていたが、カナダは韓国と変わらないようだ。
彼女のスーツケースを引っ張るジェシンが振り向いて、さっさとしろ、と怒鳴った。
彼がユニの荷物を次々と運び入れている場所が、どうやら彼女の部屋らしい。
「オッパ、私がやるよ」
「疲れてるだろ。今日だけやってやるよ。座ってろ」
車と部屋を何往復もした後、ジェシンはユニが座っているベッドに、どかっと腰を下ろした。
そこは、ベッドとベッドライト以外何もない部屋だった。
「お前の家具はヨンハが一緒に買いに行ってくれる。俺より適任だろ」
「三人で行こうよ」
「ありえない」
ユニは、大きな声で笑い出した。
時に粗暴と揶揄されるほど男らしく、細かいことが大嫌いで、しかし誰よりも温かい心を持つジェシン。
彼女の大好きなお兄ちゃんは、海を渡っても全く変わっていない。
「取り敢えず、昼寝しろ」
「オッパの部屋で寝ていい?」
「駄目だ」
「昔は寝てたのに。久しぶりに一緒に寝たい」
「アホか。さっさと寝ろ」
お兄ちゃんは、ユニのおでこを小突いて出て行った。
「けち……」
ユニは、スーツケースからTシャツとスエットを取り出して、大あくびをした。
ソウルとバンクーバーの時差は十七時間。終わったと思った一日がまた始まったようなものだ。
さっきまで朗らかにおしゃべりをしていた彼女の瞼は、すぐに落ちた。



早く寝ろ。
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【作品名】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  花の四人衆 

2014/10/21 Tue. 16:35  tb: 0   コメント: 0

【成均館 二次小説】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine - 3(パラレル)  

成均館スキャンダル連載

ドラマ版成均館スキャンダルの人物が登場する、現代パラレル二次小説です。ご注意下さい。

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ユニが目を覚ますと、空はすっかり暗くなっていた。
彼女の体に馴染んだ感触より少し固めのマットレスが、母と弟の元を離れ、海を渡ったことを実感させる。
そう言えば、まだ他の部屋を見ていなかった。
ジェシンに案内してもらわなくては、とベッドを降りて部屋を出た。
「テムル!」
「ヨリム先輩!」
部屋を出て直ぐに目に入ったソファーに、ヨンハが座っていた。
彼女が寝ている間に来たのだろう。
二人は久しぶりの再会を抱き合って喜んだ。
ヨンハに頬ずりされながら、ユニは自分の服装がTシャツとスエットであることに、はたと気づいたが、幼い頃から遊んで、こんな姿もとっくに見られていると思い直し、頬を擦りつけた。
彼女は、ヨリム先輩も大好きだ。
ジェシンと一緒に彼女の宿題を見てくれたこともあるし、ユニ姉弟とジェシン、ヨンハでお泊り会をしたこともある。
ジェシンが嫌がるユニの買い物に付き合うのは、大抵ヨンハの役目だった。
ユニは中学生の時に、なんであだ名がヨリムなのか、聞いたことがある。
女の林と書いて、ヨリム。
呆れたユニは、それ以上の説明を求めなかった。
同時に、先輩はこう見えて漢字に通じていて頭のいい人だ、と感服もした。
ヨンハが付けたジェシンのあだ名、桀驁(コロ)に至っては、手書きできる自信がない。
当時、彼女は友人関係が上手く行っていなかった。
些細なことで親友とすれ違い、なぜかユニがクラスのバッシングを受けたのだ。
内心は挫けそうだったが、堂々と渡り合った。
ヨンハはそんな彼女を賞賛して、大物(テムル)というあだ名を付けてくれた。
以来、二人はヨリム、テムルと呼び合っている。
「テムル、部屋は全部見た?」
「まだです」
「俺が案内してやるよ」
「ヨリム先輩が選んでくれたんですよね?ありがとうございます」
ジェシンの部屋やバスルーム、キッチンなど、二人でぐるりと回った。
ヨンハ自慢の女の子にぴったりな家には、ジェシンが持って来た家具が適当に、彼のインテリへの無関心そのまま、無造作に置かれていた。
残念ながら、せっかくの女の子にぴったりな家に馴染んでいない。
「インテリアショップに行こうな?」
呆れたように右手を腰に当てて部屋を眺めるヨンハのお腹が、ぐうと鳴った。
「先輩、韓国から食べ物をいっぱい持って来たんです。オッパと先輩へおみやげです。一緒に食べましょう」
「腹減ってたんだよ!」
「インスタントばっかりだけど、作りますね。オッパも食べるよね?」
「ああ、ちょうどピザも届いたぞ。お前は、カナダっぽいものを食いたいだろ」
ユニが荷物を解いて、大量のラーメンやレトルト食品をテーブルに並べた。
ジェシンとヨンハは、一つ一つ手にとって、このラーメンはバンクーバーに売ってないやつだ!と目を輝かせて喜んでいる。
ピザとレトルトの、賑やかな夕食が始まった。



ヨンハは、ク財閥の一人息子だ。
ジェシンとは中学時代からの大親友で、ジェシンがカナダ留学を決心すると同時に、ヨンハも留学を決意した。
お前には自分の意志がないのか、とジェシンは真面目に怒った。
しかし、研究者になるでわけでもなし、どこで勉強したって一緒だよ、ヨンハはそう返事をした。
留学のように長期の海外滞在の場合、兵役を終えなければならない。
二人は高校卒業後に入隊し、終わるやいなやバンクーバーに飛んだ。
幸い、ク財閥が支社をバンクーバーに出していて、ヨンハの留学は、簡単に両親の了解を得られていた。
彼らは急に勉学に燃えたらしい息子に、バンクーバーのコンドミニアムだの高級車だの買い与えた。
「ええー!留学なら、美女の家でホームステイじゃなきゃ」
彼は、車は有り難く頂戴したが、買ってもらったコンドミニアムは放置している。
宣言通り、その当時は高校生だった美人姉妹のいる家にホームステイし、姉妹と仲良く過ごしつつ、学生生活を終えた。
学生生活を終えて、ク財閥のバンクーバー支社で働き出しても、ジェシンとユニの家から目と鼻の先の美人姉妹宅に居座った。



「キツラノに帰れ」
ピザをぱくつきながら、ジェシンが呆れたように言った。
キツラノとは、バンクーバー市内の海辺沿いに広がる高級住宅街だ。
両親がヨンハに買い与えたコンドミニアムは、そこにある。
「だからさぁ、言ったじゃん。帰れない事情があるの」
「あっちもれっきとした男なんだから、ほっとけよ」
「正直に言うと、ホームステイは気に入ってるんだ」
未だ美人姉妹との生活を満喫しているらしいヨンハが、ユニにウインクした。
「事情ってなんですか?」
「テムル、聞いてくれる?」
彼は、彼のもとに転がり込んできた事情について、説明し始めた。



腹減った!
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【作品名】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  花の四人衆 

2014/10/22 Wed. 16:09  tb: 0   コメント: 0

【成均館 二次小説】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine - 4(パラレル)  

成均館スキャンダル連載

ドラマ版成均館スキャンダルの人物が登場する、現代パラレル二次小説です。ご注意下さい。

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「総理大臣のイ・ジョンムは知ってるだろ?」
端的にまとめると彼の一人息子とホームステイをしている、とヨンハは言った。
二十一歳の息子イ・ソンジュンは、ジェシンやヨンハと同様に高校卒業後すぐに兵役につき、最近、バンクーバーに来た。
財閥の長と政界の実力者である二人の父は交流があり、ヨンハとソンジュンも顔見知りだった。
一人息子の初の海外生活を心配するあまり、総理大臣はヨンハの父に息子の面倒を依頼したと、ヨンハは言った。
「地味なバンクーバーに来ないで、アイビー・リーグに行けばいいのに」
ユニが、ピザと一緒に頼んだポテトをつまみながら呟いた。
ソンジュンより1つ年下の彼女は、イ・ソンジュンという名前だけは知っていた。
彼女は高校トップクラスの成績を修めていたが、イ・ソンジュンは名実ともにトップ、高校在学中は、全教科において全国一位をキープし続け、とんでもないスーパー高校生がいると、優秀な生徒たちの間で話題になっていたのだ。
「コネは嫌なんだと」
ヨンハがラーメンをすすりながら答える。
ソンジュンは、そのスーパー高校生ぶりから伺えるように、恐らくアメリカのアイビー・リーグの大学に実力で入学できる。
しかも彼の出自なら、コネ入学も可能だ。
学生同士が親交を深め、将来そのネットワークを多方面に活かして欲しいという大学側の思惑に、彼の将来性と背後にある父親の人脈、地位が合致するからだ。
ソンジュンは、コネ入学と誤解されるのを嫌厭したらしい。
「学問は、どこに居ても深められます」
字面はヨンハの発言と同じでも、中身は大分違うこと言って、バンクーバー行きが決定した。
「お前が言ったように、バンクーバーの地味なところが気に入ったんだって」
ソンジュンの渡加はスムーズに決定したが、ヨンハに言わせると、その後はちょっとした騒動だった。
ヨンハは大学を卒業したし、キツラノのコンドミニアムで独身生活を満喫しようと思っていた。
ところが、父親からイ・ソンジュンの面倒を見るように連絡が入る。
「お前も、イ家に恩を売っておけ。これは命令だ」
ならばコンドミニアムで一緒に暮らそうと持ちかけたのだが、ソンジュンはあっさりと断った。
「韓国人と住むのは、留学の目的を考慮すると、本質的ではありません」
本質ってなんだよ!親切心で言ってるのに!
ヨンハはぐっとこらえて、ではどうしたいのかと問うた。
「ホームステイの手配をしますから、先輩はどうぞご心配なく」
ホームステイなら心配は無いと、ヨンハは、この返事を素直に承諾して己の父親に連絡したのだが、国際電話の向こうで雷が落ちた。
「イ総理大臣は、お前とご子息が一緒に暮らせば安心だと言っている」
結局、折衷案として、ヨンハが身を寄せるホームステイ先に、ソンジュンも入居することになった。
そして、ジェシンに呆れられながらも、ヨンハはホームステイ生活を続けている。
「でも、根は良い奴なんだよ。今日も誘ったんだけど」
「来るのか?」
「いや、韓国人と長時間過ごすのは“本質的”じゃないってさ。しかも英語で。あいつ、俺に英語で話しかけるんだぞ。“本質”を追求して」
「イ・ソンジュンって、嫌なヤツ」
ユニが、頬を膨らませた。
「テムル、お前、韓国でイ・ソンジュンに会ったことある?」
「違う高校だし、ないですけど」
「会ったら、好きになっちゃうかもしれないぞ。あいつは、女の子がほっとかないタイプの堅物なんだ」
「総理大臣の息子なんて、遠すぎて、興味ありません」
「遠くない。ご近所さんだ」
「そっちの遠いじゃないです」
からかう視線でにやつくヨンハに、ユニは、絶対に好きにならない!と強く否定した。
アイビー・リーグにコネで入れるような環境のイ・ソンジュンと、父がいない境遇の自分は違うのだ。
彼女は、高校卒業後、二年間アルバイトをして、留学資金を貯めた。
学費や生活費は、ジェシンの父、ムン・グンスが出すと言ってくれたし、実際のところ、大部分は彼の好意に甘えている。
だが、飛行機代や教科書代、生活費の足しぐらいは、自分で用意したい。
高校に通う弟の学費も、面倒を見てやりたかった。
とは言え、若い時間をいつまでも労働で浪費する彼女に、周りはやきもきした。
遂には業を煮やしたムン・グンスが、弟が高校を卒業するまでソウルで働こうとしていたユニを追い出す形で、バンクーバーに叩き出した。
そして、夏真っ盛りの八月の今日、彼女はカナダに上陸した。
総理大臣の息子と違い、周りに助けられてやっとここまで来た。
しかも、本質云々と、随分鼻持ちならない御曹司らしい。
御曹司は、ユニのストライクゾーンの端っこにすら掠らなかった。



「イケメンだよな」
冷蔵庫からビールを取り出しながら、あまり人の容姿をとやかく言わないジェシンが、珍しく褒めた。
「オッパ、会ったことあるの?」
「いや、ヨンハと一緒にいるのを見たことがあるだけ」
「テムル。イ・ソンジュンはすごいイケメンだ。モテるよ、あれは。唾を付けるなら急がないと」
「ふーん」
ユニは、ジェシンにビール缶を受け取って、プルタブに指をかけながら、上の空で返事をする。
「俺、イ・ソンジュンにあだ名をつけたんだ。佳朗と書いてカラン。最高の花婿候補っていう意味だ。ぴったりだろ?」
イケメンで、成績優秀で、総理大臣の息子。確かに最高の花婿候補だ。
三人は、声を上げて笑った。


本質とは。
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【作品名】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  花の四人衆 

2014/10/23 Thu. 17:34  tb: 0   コメント: 0

【成均館 二次小説】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine - 5(パラレル)  

成均館スキャンダル連載

ドラマ版成均館スキャンダルの人物が登場する、現代パラレル二次小説です。ご注意下さい。

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バンクーバーに到着した次の日から、ユニは忙しく動いた。
Bus Pass(バスパス)という、ジェシンが話していたスカイトレインや市内のバスに乗れる定期券を購入し、入学予定のカレッジで手続きを終え、教科書も買った。
教科書は、ジェシンが、学内のスチューデント・ユニオンに行けば古本を手に入れられると教えてくれたから、そこで安く揃えた。
警備会社に勤務しているジェシンは、スケジュールが不規則だ。
平日に到着したユニは、次の日も休みだという彼の休日を無駄にしないようにてきぱきと動いた。
ひと通り用事を済ませたあと、ジェシンは車を走らせながら言った。
「市内の名所を回ろう」
スタンレーパークの木々、ヨンハのコンドミニアムがあるキツラノの街並み、ハリウッド映画に登場したというコロッセオのような図書館の建物。
夏の快晴の空の下、車窓から見るそれらは、これからの生活が素晴らしい物になると約束してくれるに充分だった。
「私、ちゃんと大学に進学できるかな」
ユニが入学するカレッジは、四年制大学ではないが、大学に進学を希望するする学生が多く通っている。
仕事をしながら学業に励む者やユニのように英語にハンデがある者は、大学より単位が取りやすいカレッジに通いながら大学進学を目指す。
後々、大学に初年度から入学し直さなくても、転入した大学でカレッジの単位が認められるからだ。
学生は、転入時の単位が保証されている授業を受けていくことになる。
このような仕組みがカナダでは一般的で、ユニが入学を決めたのも、大学進学に定評があるカレッジだった。
ヨンハやジェシンも、かつてこの学校に通っていた。
「カレッジに入る前から、弱気なことを言うな。俺だって卒業出来たんだから」
「うん」
「景色を楽しめるのは、今のうちだ。次は、ガスタウンでも行くか」
ジェシンは、きゅっとハンドルを切った。



入学手続きをした後の数日間で、ヨンハと家具や生活用品を揃えて、生活の基盤は出来上がった。
朝は、仕事に出かけるジェシンと朝食を食べ、一人で留守番をしている日中は英語を学習する。
体が鈍らないようにとヨンハが買ってくれたピンクのバランスボールで、運動もした。
日曜日の今朝は、いつもより早起き出来たから、二人分の朝ごはんを用意したあと、リビングでバランスボールを使った運動をしていた。
ジェシンはネクタイを締めながら、室内で跳ねるユニに怒鳴る。
「俺は忙しいんだ。外でやれ」
「はーい」
ハーフパンツとTシャツ姿のユニは、日焼けしないようにキャップを被り、パーカーも羽織った。
もちろん、パーカーのフードを被ることも忘れない。紫外線対策は万全だ。
しかし、紫外線対策とは裏腹に、傾斜のある庭でバランスをとるのは難しく、数分もしない内に、ボールが道路の方に転がってしまった。
ユニは慌てて追いかける。
ピンク色のボールは、緑の芝生の斜面を弾みながら進む。
「道路に出る前に捕まえなくちゃ!」
彼女は、ピンクのボールだけを見て庭を駆け下りた。
彼女の猛突進もむなしく、ボールは歩道に踊り出る。
車道に入ってしまったら、大惨事になりかねない。待ってと叫びながらボールを追った。
「あ!」
ボールが急に宙に浮いた。
ユニの視線は、なおもボールを追いかける。
その視線の先で、長身の青年が、ボールを拾い上げていた。
「どうぞ」
韓国語でどうぞと差し出され、ユニはありがとうございますと、ボールに触れた。
青年と目が合う。
瞬間、ユニの心臓は大きく震えた。
漆黒の涼しげな瞳と、対照的なカールがかった睫毛。
力強い線を描く鼻筋。
赤い唇が開き
「いいえ」
と、彼女の礼に対して、短く返事をした。
低いけれども温かく柔らかな声が耳の奥をくすぐり、彼女を夢心地にさせる。
「カラン、俺も一緒に行くからちょっと待て……あれ?テムル?」
いつの間にかそばに来たヨンハが、何か言っている。
しかし、ユニは、青年の持つボールに両手を当てたまま、彼の顔に見惚れていた。




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【作品名】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  花の四人衆 

2014/10/24 Fri. 17:13  tb: 0   コメント: 0

【成均館 二次小説】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine - 6(パラレル)  

成均館スキャンダル連載

ドラマ版成均館スキャンダルの人物が登場する、現代パラレル二次小説です。ご注意下さい。

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「テムル、テムル!コロが呼んでる」
「ユニ、早くしろ。飯食うぞ」
ボールを追いかけていた少女が、玄関で怒鳴っている男に謝りながら駆けて行った。
ボールを拾った青年、ソンジュンは、少女にボールを拾った時のまま、腕を直角に曲げて彼女の後ろ姿を見ている。
「カラン、教科書買うんだろ?車出してやるよ」
「あっ。はい」
ソンジュンは、いつもなら自力で解決してこその留学生活と断るが、今はあまり頭が回らなかった。
さっき、キャップのつばの奥から自分を見上げる少女の漆黒の瞳に、釘付けになった。
今も彼女の瞳が脳裏からはなれない。

ユニ。

玄関の男が叫んでいたのは、恐らく彼女の名前だろう。
彼女の名前も知れた照れくささで、心の奥が暖かくなる。
ソンジュンが助士席に収まったのを確認して、ヨンハは車のエンジンをかけた。
「一目惚れ?」
ヨンハに図星を指され、ソンジュンは顔をかっと赤くした。
「いえ、そういうわけではありません」
「さっき、韓国語だったよな。俺には英語で話すくせに。あ、でも今は韓国語だけど」
「あの子が韓国語で叫んでたからです」
「俺が韓国語で叫んでも、お前は絶対に英語で返すね。えーと、本質と原則の……なんだっけ?」
「留学の本質から外れない行動を選択することが、僕の原則です」
「そう、それ。で、お前は、本質から外れた」
二人のホームステイ先からソンジュンが通うことになるカレッジまで、数キロしかない。
彼はまだ知らないが、そこは一目惚れしたユニも通うことになる学校だ。
駐車場に到着した車は、ヨンハの慣れたハンドル捌きにより滑らかに白い枠の中に停車した。
「懐かしいなぁ」
ヨンハは、車を出ると大きく伸びをして、教科書片手に語り合う学生らの様子を眺める。
彼がかつて通い、単位取得や英語に四苦八苦していたカレッジは、今も何も変わっていない。
ソンジュンとユニが肩を並べてここを歩く日が来るのだろうかと、生真面目な男に視線を向けた。
「テムル、可愛かっただろ?」
ヨンハの隣に立ったソンジュンは、返事をしなかった。
さっき知ったばかりの少女のことで、彼が話せることはない。
「でも、あいつに可愛いは禁句だ。言った途端に、嫌われる」
え?と驚き、次の言葉を待つソンジュンに、ヨンハは答える。
「だって、あいつ、男だもん」
「ユニと呼ばれてました」
「うん、外見も可愛いのに、名前まで女っぽいから、テムルは可愛いコンプレックスの塊だ」
キャップとパーカー、ハーフパンツ。服装は確かに男っぽかったかもしれないが、華奢な体つきは男らしさからほど遠い。
あの容姿のどこが男なのだろうかと、ソンジュンは眉を顰めた。
「キム・ユニ。あだ名はテムル。大物と書いてテムルだ。なんで大物かわかる?」
「いえ」
「ああ見えて、あいつ、あれがデカイんだよ」
「あれ?」
「男のあれ。テムルもお前と一緒でバンクーバーに来たばっかりだし、ここに通う予定だ。韓国人と関わらないとか言わないで、仲良くしろよ」
「先輩、冗談が過ぎます」
「冗談でこんなこと言うかよ。お前は無駄遣いが嫌いだから、スチューデント・ユニオンで教科書を買おう」
ヨンハの声がソンジュンの耳に薄っすらと届く。
だが彼は足を止めて、雲一つない空を仰いだ。
『可愛いは禁句』『あいつは男だ』『あれがデカイ』
衝撃的な言葉が、彼の頭の中でがんがんと鳴り響いた。




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【作品名】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

【テーマ】

2014/10/25 Sat. 03:30  tb: 0   コメント: 0

【成均館 二次小説】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine - 7(パラレル)  

成均館スキャンダル連載

ドラマ版成均館スキャンダルの人物が登場する、現代パラレル二次小説です。ご注意下さい。

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教科書を買いながらヨンハがソンジュンに告げた話はこうだ。
曰く。幼馴染みのジェシンを頼ってバンクーバーに来た。
曰く。キム・ユニと名前を呼ぶことを許されているのは、ジェシンだけ。
曰く。何度も言うが、あいつは男だ。
曰く。俺は、男同士の恋愛にも偏見ないけどね。
ソンジュンは、人生初の一目惚れから、いや、人生初の恋の芽生えから三十分も立たぬ間に、奈落の底に突き落とされた気分だった。

僕は、男を好きになるところだった。

教科書を車に積み、助士席に乗り込み、家に戻る。
一連の流れも、ヨンハに従うだけで精一杯だ。
ステイ先の姉妹が「顔が真っ青だ」と駆け寄ってきたが、表情を作って誤魔化すことすら出来なかった。
彼は、自身に課した原則も忘れて昼間からベッドに突っ伏した。
これまで、面白みのない奴だと笑われるぐらい真剣に生きてきた。
高校生の本分は勉強だと思って真面目に取り組んだし、進学が決定している今も、勉強から学問へと、より物事の深部へ近づけることへの期待に胸は膨らんでいる。
些か自画自賛だが、先人たちが示した学生のあるべき姿をきちんと踏襲出来ているとも思う。
もちろん、正しく生きることと男を好きなることは別だし、ヨンハが言った通り、男同士の恋愛に差別的な考えを持つべきではない。
だが、それが当事者となると話は違ってくる。
「僕は、ゲ、イ……?」
生真面目すぎたからなのか、今まで誰かを好きになったことはない。
好意を寄せて告白してくれる女子はいたように記憶しているが、交際まで発展していなので、どんな子だったかも覚えていない。
親が勝手に決めた許嫁とやらは、申し訳ないが鬱陶しい。
高校時代は勉強に忙しく、女子と会話をしていなかったから、人を好きになる機会もなかった。
クラスメイトは容姿で惚れた腫れたと騒いでいたが、姿形が美しいことは、その人の真の評価ではないから馬鹿馬鹿しいと、一蹴していた。
そんな自分が、一目惚れをした。
そして、相手は男だった。
これまで異性に興味が持てなかったのは、真面目な性分のせいではなく同性愛者だったからなのだろうか。



ソンジュンがボールを渡した時に、ありがとうございますと、小さな口が答えてくれた。
ぷっくりとした唇は薔薇色で、肉厚ではないがとても柔らかそうだった。
ソンジュンがあまりに彼を見つめるからか、ありがとうといった後は、上下の唇をわずかに開けたまま、立っていた。
「キム・ユニ」
名前を口の中で転がしたら、体の奥に火が灯った。
中心が芯を持ち始め、右手がそろそろと下へ落ちる。
硬くなりつつあるその部分をデニムの上から包むと、背骨に痺れるような刺激が走り、そしてその瞬間、飛び起きた。
己のしようとしていたことに愕然とする。
「ソンジュン。具合悪いの?時差ボケ?」
ホストマザーが、ドアの向こうから声をかけてくれた。
「え?」
彼女の最後の一言が、天からの啓示の如く、彼の耳に響いた。
――時差ボケ?
バンクーバーに到着してまだ一週間しか経っていない。
そろそろ適応出来たつもりでいたが、体は思っているより正直なのかもしれない。

そうだ、これはきっと時差ボケで頭が働いていなからだ。
僕が男を好きになるなんて、時差ボケが起こした間違いだ。

もう一度、思考が明瞭な状態でキム・ユニに会えば、きっと気の迷いだとわかるだろう。
可愛らしいと思えた唇も華奢に見えた体つきも、案外無骨で、妙な気持ちも白けるに違いない。
「時差ボケみたいです。今日は申し訳ありませんが、寝かせて下さい」
彼は、危機的状況が一変したことに安堵した。
正しい学生として、健康管理もまじめに取り組まねばならない。
目覚まし時計を夕食の時間にセットして、静かに目を閉じた。




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【作品名】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  花の四人衆 

2014/10/27 Mon. 10:57  tb: 0   コメント: 6

【成均館 二次小説】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine - 8(パラレル)  

成均館スキャンダル連載

ドラマ版成均館スキャンダルの人物が登場する、現代パラレル二次小説です。ご注意下さい。

- - - - - - - -

ユニは、午前中を上の空でソファーに腰掛けて過ごした。
ヨンハがボールを拾ってくれた青年をカランと呼んでいたから、彼がイ・ソンジュンであることはすぐにわかった。
女がほっとかないタイプの変人と揶揄される理由が――ヨンハは堅物と言ったが、本質云々の件(くだり)で、彼女の認識は、変人に変化していた――よく分かる。
好きにならないと断言した自分も、見惚れてしまった。
「綺麗だったな」
心臓がとくんとくんと音を立てている。
はぁ、と息を吐くと、動悸の苦しさが少し逃げた気がした。
彼女は、ちらりと目に入った彼の長い指を思い出し、彼が拾ってくれたボールを撫でる。
「声も低くて格好良かった」
あんな声で囁かれたら、きっと一発ノックダウンだ。

って、そうじゃなくて!

ユニは、大きく伸びをして気を取り直した。
イ・ソンジュンは、総理大臣のお坊ちゃまで、何かにつけて正論を振りかざす変人だ。
あの容姿なら“女がほっとかない”だろうが、それは他に任せればいい。

私とは関係ないもん。

接点のない人間に時間を費やすほど自分は暇人じゃないと、ユニは立ち上がった。
ジェシンとヨンハ、それに弟以外で親しくしている男の人がいないから、整った顔を間近に見て、ちょっと調子が狂っただけだ。
気を取り直してキッチンに立つ。
ジェシンは、午後は帰宅して夜中に再出勤するシフトだと言っていたから、何か精の付くものを作ってやりたかった。



昼食を二人でつつきながら、ユニは心ここにあらずだ。
「お前、俺に気を使って起きてるだろ?」
「そんなことないよ」
気を取り直したつもりでも、ソンジュンの眼差しが頭から離れない。
どうぞと耳に届いた声が、頭の中で木霊する。
上の空でスープを口に運ぶ彼女の様子を見たジェシンが、堪り兼ねて寝不足を指摘した。
「韓国からカナダに来るときの時差ボケは凄くしんどいから、寝たい時は寝とけよ」
「オッパは、韓国に帰ってきた時、元気だったでしょ」
「逆は大したことない。韓国からカナダは、本当にきつい。完全に慣れるまで、一週間じゃ足りない」
「でもみんな、カナダ旅行しても元気じゃない?」
「ハイになってるんだろ」
ユニは、サラダに箸を伸ばしながら呟く。
「時差ボケなのかなぁ」
「時差ボケだろ」
ジェシンは、ユニがカナダに来て早々恋に落ちたとは想像だにしていない。
呆けている理由は時差ボケだと断定して、自室に向かった。
「俺は寝る。お前も食い終わったら寝ろよ」
「はーい」
ユニは、時差ボケと言われたら、途端に眠たくなった気がした。
彼女の分の昼食はまだ沢山余っていたが、ラップにくるんで冷蔵庫に収めて、ジェシンの言う通り昼寝のためにベッドに潜り込んだ。



ユニは頭から タオルケットを被った。
ジェシンには時差ボケを指摘されたが、これが時差ボケなんかのせいじゃないことは、わかっている。
ソンジュンと対面して以来、彼は彼女の頭を占拠し続け、そして彼女は、その状況に甘んじるどころか、積極的に彼の面影を思い浮かべる始末だ。
眠いと思っていたのに、どんどん頭は冴えてくる。
「次に会ったら、幻滅するかも」
堅物の変人でお坊ちゃまのイ・ソンジュン。また会ったら、きっと馬鹿馬鹿しくなるに違いない。
「顔がいいだけの男なんて、最低に決まってる」
自分に言い聞かせながらも、鳴り止まない心臓の鼓動を持て余して、いつまでもベッドの上で身悶えていた。




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【作品名】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  花の四人衆  一ヶ月感謝企画 

2014/11/03 Mon. 11:45  tb: 0   コメント: 2

【成均館 二次小説】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine - 9(パラレル)  

成均館スキャンダル連載

ドラマ版成均館スキャンダルの人物が登場する、現代パラレル二次小説です。ご注意下さい。

- - - - - - - -

ソンジュンと共に帰ってきたヨンハは、美人姉妹から、ソンジュンが外出前と様子が違うのはなぜかと質問攻めにあった。
姉妹はよくヨンハに懐いていたのに、ソンジュンがやって来て以来、ヨンハは二番手に甘んじている。
それが面白くなくて
「風邪じゃない?」
と適当に返事をしたら、二人は納得し、今度は母親にソンジュンの健康相談を持ち掛けた。
結局時差ボケで落ち着いたらしいが、ヨンハの口元は、そんなわけあるかとニヤニヤ笑いが止まらない。
あんな頭でっかちで女心が存在することにも気付いてない奴の、どこがいいんだろうね。と、思わなくはないが、あの手の鈍感さが女心を刺激するのは、世の常だ。
良家の出で、遊ぼうと思えばやりたい放題だろうに勉学一辺倒なのが、逆に女心をくすぐるのだろう。



そう言えば、国防部長官の娘、ハ・ヒョウンという許嫁にも冷淡だった。
まだソンジュンが高校生だったころ、ヨンハは父親に呼び出されて、韓国に帰国したことがある。
父親主催のパーティーに出席しろとの仰せだった。
立食パーティーの席で、ヨンハ同様、無理やり連れて来られたと思しきソンジュンが、礼儀正しく立っていた。
彼は、容姿と持って生まれた優雅さのせいで、周囲の視線を一身に集めていたが、彼に近づく勇敢な女性客はいなかった。
彼の隣で、虫除けの如く、ヒョウンが睨みを効かせていたからだ。
ヨンハが、ホストの息子として招待客との挨拶を終えた後、休憩を取ろうと会場を出ると、ソンジュンとヒョウンが廊下で言葉を交わしていた。
「あいつ、女とパーティーを抜け出すつもりか?」
ソンジュンがそんな行動に出ることが意外で、ヨンハは会場のドアの陰に隠れて二人を窺う。
彼の場所からは、ヒョウンは背中しか見えないが、ソンジュンの顔は正面から見えた。
彼は意外にも、愛の逃避行にしては険しい顔をしている。
「もしかして、僕のことが好きなのですか?」
ヒョウンが彼にご執心なのは、今日のパーティーの様子しか知らないヨンハでも分かる事実だ。
何が“もしかして”だと、これだけで吹き出しそうなヨンハへ追い打ちを掛けるように、ソンジュンの猛攻は続く。
彼の首に抱きついたヒョウンの腕を、勢い良く振りほどいたのだ。
「これは、なんですか」
タキシードの襟にねじ込まれた白い紙を長い指に挟んで、彼はすごんだ。
「えっと、それは……両思いになれるおまじないで……」
「このような下らない振る舞いをする方とは、友人としても付き合いません」
彼は、手の中にある両思いグッズを突き返し、あからさまな嫌悪感を、眉間にシワを寄せるという手段で表明した。
そして、うわっと泣きだした彼女に会釈すると、ハンカチも貸さずにその場を立ち去った。
ドアの陰のヨンハは、普通そんな振り方する?と、声を殺して笑い、声を我慢したせいで涙はとめどなく溢れ、やっと笑いと涙が引っ込んでもまだヒョウンがわんわんと泣いていたから、通りがかりを装って彼女にハンカチを貸してやった。
「あいつ、面白い」
暫くの間、ヨンハ自身が好みではない女の子に追いかけられた際、ソンジュンの「友人としても付き合いません」を拝借したほど、この一件で、ソンジュンはヨンハのお気に入りになった。



この出来事は随分前のことだが、ソンジュンを気に入ったきっかけだっただけに、ヨンハの記憶にしっかりと刻み込まれていた。
「だからさ、俺はお前のことが好きなんだけど」
ヨンハは、ソンジュンの部屋のドアをノックする。
返事はない。
数センチだけドアを開けて覗くと、ソンジュンは、きれいな仰向けで眠っていた。
「ちょっとは恋の辛さを体験しろ」
ソンジュンの優秀さは大いに称えるべきことだが、彼は本質だの原則だのに凝り固まっている。
そういう人間の凝りをほぐすなら、恋の悩みがてきめんだ。
ソンジュンの恋慕の相手、ユニもまたソンジュンに一目惚れしたのは明らかにも関わらず、ヨンハの教育的配慮のせいで円滑に事が進まなくなりそうだが、所詮は一目惚れ同士だ。すぐにくっつくだろう。
「テムルも、あんなに否定しなきゃ、協力してあげたんだけど」
コロに感謝されるかもしれないなぁ、と無責任なことを考えながら、ヨンハはホストファミリーがくつろいでいるリビングに戻った。




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【作品名】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  花の四人衆  一ヶ月感謝企画 

2014/11/04 Tue. 13:21  tb: 0   コメント: 2

【成均館 二次小説】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine - 10(パラレル)  

成均館スキャンダル連載

ドラマ版成均館スキャンダルの人物が登場する、現代パラレル二次小説です。ご注意下さい。

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目覚ましがけたたましく鳴り響いて、ソンジュンは目を覚ました。
辺りはすっかり真っ暗で、ドアの隙間から夕食のスープの香りも漂ってきている。
彼は、午前中の朦朧とした状態と寸分違わず混乱した頭で、ベッドに腰掛けた。
よく眠ったはずだ。
しかし、彼が見た夢は、彼より一回り以上小さいキム・ユニが隣を歩いている夢だった。
キム・ユニはパーカーの裾から覗く指先をソンジュンの右手に絡ませる。
彼はキム・ユニに好きだと告げて、遠慮がちに彼の指先に巻き付く細い指を、指の股まで手繰り寄せた。
互いの指を交互に合わせて、強く握ったら、キム・ユニは嬉しそうに微笑んだ。
さっきまで見ていた夢を思い出しながら、ソンジュンは、手のひらをじっと見つめた。
夢の中でも今朝と同じパーカーと短パンを着ていた、キム・ユニ。
夢で、キム・ユニの手は、薄く肉づいて、白くなめらかな肌がそれを覆っていた。
指の腹には、キム・ユニの手の甲の骨の感触が、残っている気がする。
ソンジュンは、右手を握ってはまた開く、を繰り返しながら、キム・ユニは男だ、と声に出して言い聞かせた。



ソンジュンの周囲には、ヒョウンという二歳年下の女子がいた。
彼の二十一年間の人生で、後にも先にも、周りにいる女子は、クラスメイトを除けば彼女だけである。
中学生の時分に将来結婚するのだと紹介されたが、彼は彼女に対して何の興味も抱かなかった。
その頃はすでに、恋愛行動よりも読書のほうがずっと有意義だと信じて疑わなかった彼は、ヒョウンが彼を訪ねても、リビングのソファーに案内して、通り一遍の、今日は天気も良いだとか、定期テスト前で互いに大変ですねだとかの相手への興味を一切感じさせない挨拶をしながら紅茶を一杯飲んだ後、おもむろに本を開いた。
彼は、礼儀を欠くことはしたくなかったから、ソファーにぽつんと座る彼女に、良かったら好きな本を貸すと提案した。
「私のことは、気にしないでください」
彼女はいつもそう返事をし、ならばと、ソンジュンもソファーに座って自室から持って来た本を開く。
ヒョウンの父親が彼女を迎えに来るまで、そうして二人でソファーで過ごした。

僕は、結婚に興味はない。

双方の父親の乗り気と裏腹に、彼は隣に座るヒョウンよりも、本の向こうに広がる知性の海に魅せられていた。
彼女が彼と同様に知的活動に勤しむタイプだったら、話が弾んだだろう。
だが、残念ながら彼女は、ごく一般的な乙女だった。
彼女の方も段々と学習し、ソンジュンの隣で読む本を持参するようになったのだが、それらはソンジュンが鼻で笑う類の――鼻で笑うならまだましで、彼には理解できないようなポップな装丁の本だったり雑誌だったりするから、余計に二人の距離は広がった。
こんな風に数年間をほぼ無言で過ごしたソンジュンは、当然、彼女も結婚に興味が無いと思っていた。
だから、無理やり参加させられたパーティーで、彼女から想われていると知った時のソンジュンの衝撃は、筆舌に尽くし難い。
仮にも数年間を婚約者として過ごした相手だ。
素直な考えを表明することが、この件に対する誠実かつ正しい対処である。
彼は、驚きと馬鹿らしいまじないのせいで語気を強めてしまったものの、彼の気持ちをしっかりと伝えたつもりだった。
しかし、ヒョウンはしぶとかった。
ソンジュンへの気持ちが彼の認識下に収まった途端に、やけに露出が大きい服装で、ソンジュンを訪ねるようになったのだ。
ソンジュンも、父親の手前彼女を追い出すわけにも行かず、いつもの通りにソファーに案内して、紅茶を飲む。
ヒョウンは、挨拶が終わり彼が本を開くと、彼に密着して本を覗き込み、どんな内容か教えてくれとせがんだ。
当然、ソンジュンが内容をかいつまんで説明しても、彼女には理解できない。
彼は、絡み付く腕を解いて、自室に篭った。
母親には、自室のドア越しに怒られたが、絶対にドアを開けなかった。
彼にとって、見せつけられる彼女の肌も、押し付けられる彼女の体も、鬱陶しいだけだった。



それなのに、である。
まだ触れたこともないキム・ユニの手を夢に見てしまった。
好きだと言って、強く握った。
すべすべとした肌を身勝手に想像し、今も手のひらにその感触を乗せて、回想している。
「こんなことでは、キム・ユニに失礼だ」
ソンジュンは、拳で左胸を叩きながら、また、キム・ユニは男だ、と繰り返した。




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【作品名】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  花の四人衆 

2014/11/09 Sun. 17:36  tb: 0   コメント: 2

【成均館 二次小説】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine - 11(パラレル)  

成均館スキャンダル連載

ドラマ版成均館スキャンダルの人物が登場する、現代パラレル二次小説です。ご注意下さい。

- - - - - - - -

ソンジュンは、留学生活に早く慣れるために、カレッジの図書館に通い始めていた。
そこで、ひたすら多読する。
ヨンハと購入した教科書の読解は、然程難しくなかったが、英語を読み進めるスピードはまだ遅い。
授業の開始までに、素早く英語を読む技術を身に付けたかった。
習うより慣れろで、彼は、どんどんページを捲る。
韓国語に訳されていた本の原典を当たるところから始まり、興味の持てる分野を片っ端から読み漁った。
学校までのニキロの距離を、彼は毎日歩く。
勉学に臨む前に、まず心身ともに健やかであるべきだ。とは、彼の原則に記されている第一条だ。
心はキム・ユニの影がちらつくせいで健やかとは言いがたいが、せめて体調は整えたいと、彼は徒歩通学に励んだ。
そもそも、彼の心のぶれも、時差ボケから来る体の不調が原因である。
キム・ユニを素直に“彼”と呼べないこの由々しき事態は、規則正しい生活とウォーキングで体調が整えば、笑い話になるだろう。


ソンジュンとユニの再会は、初めての出会いからおおよそ一週間後に訪れた。
バンクーバーの八月は、日が長い。
ソウルであれば夕暮れ時という時間、ソンジュンは今日の読書を終え、帰途についた。
まだ存分に日差しが降りそそぐ中を彼は進む。
ホームステイ先と目と鼻の先の、キム・ユニの家の前を通る時は、いつも緊張した。
小さな後ろ姿ぐらいは眺めたい、いや、その欲求がそもそもの間違いだと、心臓の壁がざわつくような押し問答が自然と湧き上がり、そして最後は、キム・ユニの姿を認められなかった落胆と共に、ホームステイ先のドアをあけるのだ。
彼は今日も、キム・ユニと会うことは叶わないだろう現実の直視と仄かな期待で心を振り子のように揺らしながら、キム・ユニの住む家のブロックに片足を進めた。
果たして、キム・ユニがそこにいた。
庭にしゃがんで一心不乱に草抜きをしている背中。
パーカーのフードをすっぽりとかぶっているけれど、彼を悩ます小さな体は紛れも無くキム・ユニだ。
声をかけるべきなのだろうか。
ソンジュンは、立ち止まった。
キム・ユニも同じカレッジに通うのだから、“友人”として関係を構築することは、自然に思える。
ヨンハとジェシンが親友同士である限り、どのみちキム・ユニを避けられないのだ。
新学期にキャンパスで偶然会って気まずい思いをするよりは、近隣の者として声をかけてしまった方が、よほど礼儀正しい態度であろう。
それに。
ソンジュンは、ごくりと唾を飲み込んだ。
これは、彼にとってのビッグチャンスだ。
何度も、己に言い聞かせたのだ。
「時差ボケのせいで変な気持ちになっただけで、次に会ったら、絶対に白けるはずだ」
と。
ここで怖気づいてこのチャンスを逃せば、今後の留学生活にも多大な悪影響をおよぼすだろう。
「僕は、ずっと正しくあろうとした。これからも、僕は変わらない」
ソンジュンは、大きく息を吸い込もうとした。
だが、心臓が壊れたメトロノームよろしくスピードを上げるせいで、浅い呼吸が精一杯だった。

キム・ユニは男だ。
キム・ユニは男だ。
キム・ユニは男だ。

ソンジュンは、拳で左胸を叩きながら呪文のように一つのフレーズを繰り返す。
彼の視線は、まっすぐに、キム・ユニの背中を捉えていた。




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【作品名】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  花の四人衆 

2014/11/20 Thu. 17:11  tb: 0   コメント: 4

【成均館 二次小説】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine - 12(パラレル)  

成均館スキャンダル連載

ドラマ版成均館スキャンダルの人物が登場する、現代パラレル二次小説です。ご注意下さい。

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こんにちは。ソンジュンは、恐る恐る丸まった背中に声をかけた。
ヨンハに宣言した「英語で通す」は、この際無視した。
一心不乱に草抜きをしていたキム・ユニは、勢い良く立ち上がって、くるりとこちらを向いた。
「あ、こんにちは!」
庭のゆるい傾斜を跳ねるように駆け下りてくる。
初めてキム・ユニを見た時も、こんな風に可愛らしくボールを追いかけていた。
彼は、キム・ユニが自分のところに辿り着いたら、すぐにでも抱き締めたい欲求にかられ、ああ、こんなことではいけない、と気を引き締める。
キム・ユニのコンプレックスは、可愛い、ではないか。
きっと、世の老若男女に可愛いと思われて、嫌になってしまったのだろう。
男なら、当然だ。

……そうか、みんな可愛いと思うのか。

沢山の人々がキム・ユニに惑わされたという結論に至って、ソンジュンは少しほっとした。
己は男が好きなわけではないのだ。
キム・ユニだけが持つの不思議な魅力に囚われただけに違いないのだ。
ちょこまかと駆けて来たキム・ユニは、両腕を脇にぴしりと揃えて、ソンジュンの前に立った。
「忙しいときに、声をかけてしまってすみません」
キム・ユニは、この前と同じように、キャップを被ってパーカーのフードで頭部をすっぽり覆ってしまっている。
よく顔が見えないから、謝りながらすこし屈んで覗きこんだら、キム・ユニは俯いてしまった。
「全然そんなことないですよ。働かざるもの食うべからず、です」
恥ずかしそうに両手を頬に当てた拍子に、ほっぺに土がついてしまい、ソンジュンはとっさに腕を伸ばした。
しかしあと一センチの、ふっくらとした皮膚に触れようという距離で、我に返ってさっと指を丸める。

男に頬を触られたら、気持ち悪いだろうな。

可愛いがコンプレックスのキム・ユニを傷付けたくはない。
「土が、ついてます」
ソンジュンが自分の頬を指さして教えてやると、キム・ユニは、ええっと目を見開き、パーカの裾で懸命に頬を擦った。
可愛い、とまた、ソンジュンは晴天の空を仰ぐ。
キム・ユニは男だ。キム・ユニは男だ。
そして、この一週間の間に何百回と復唱したフレーズを、また繰り返す。
「出掛けたんですか?」
今度は、キム・ユニがソンジュンに問いかけてくれた。
「カレッジの図書館に通っているんです」
キム・ユニは、学校が始まっていないのに凄い、と呟くと、ソンジュンが持っている本の表紙のアルファベットを読み上げた。
「ジャーゲン?」
キム・ユニは、少し身を乗り出す形でソンジュンの抱えている本を覗き込み、自然、頭のてっぺんがソンジュンの鼻先に近づく。
瞬間、シャンプーの香りが漂ってきた。
女の子のような、甘い香りだ。
かつてヒョウンが似たような匂いを迷惑なほど振りまき、加えてソンジュンにしなだれかかろうとしたことがあったが、あの鬱陶しい匂いが、キム・ユニから漂った途端、こうも己を酔わせるとは。
ああ、参った。ソンジュンは、思わず右手で口を覆う。
「ユルゲン・ハーバマスっていう人の本です」
なんとか平静を取り戻さんと、手の平を丸めて拳の形にし、それを唇に押し当てる。
真夏に、スウェット素材の長袖パーカーを着こみ、にも関わらず汗臭さがないどころか、甘い香りを立ち昇らせているキム・ユニ。
こんな人が男だなんて、どうにかなってしまいそうだった。
「ハーバマスって聞いたことがあります。ドイツの哲学者でしたっけ?」
「知っているんですか?」
ソンジュンは高校生の頃からこの手の本を読んでいたが、周りは、誰一人として興味を示していなかった。
彼が何の本を読んでいるかさえ、理解していなかったはずだ。
彼は、甘い香りに目眩を覚えながらも、キム・ユニの反応が嬉しくて、思わず聞き返していた。
「知ってるってほどでもないです。現代思想の簡単な本を読んだ時に、ただ、名前を見ただけです」
「僕も、詳しくないんです。寧ろ、弱いから、読もうと思ったぐらいで」
「でも、すごいです!普通は、難しそうで、手が出ないですよ」
ソンジュンは、キム・ユニは、謙遜しているのだろうと思う。
高校の課程を終えただけでは、思想の本を、本人は簡単なと断っていたが、このジャンルの本を読みこなす素養は得られない。
ハーバマスの名にたどり着くには、それなりに読み進めなければならいのだが、大抵、入門だとか初心者だとかタイトルに入っている本でも、タイトル騙しもいいところで、素養がなければ一ページ目で挫折するのがオチである。

キム・ユニなら、学問好きな僕を、理解してくれるかも知れない。
一緒に、楽しんでくれるかもしれない。

ソンジュンは、生まれて初めて、誰かと友になりたい、と思った。
「これは英語だけど、韓国語版を持って来ているんです。良かったら、貸しましょうか?」
「いいんですか?」
「うん。明日、持って来ます」
聡明な、キム・ユニ。
キム・ユニこそ、ソンジュンが探し求めていた人だった。




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【作品名】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  花の四人衆 

2014/11/25 Tue. 01:17  tb: 0   コメント: 2

【成均館 二次小説】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine - 13(パラレル)  

成均館スキャンダル連載

ドラマ版成均館スキャンダルの人物が登場する、現代パラレル二次小説です。ご注意下さい。

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ソンジュンは、明朝カレッジに向かう途中に立ち寄ると約束して、その場を離れた。
名残惜しかったが、相変わらず甘い香りを振りまいているキム・ユニの側にいると、おかしくなりそうだったのだ。
「あの!イ・ソンジュンさん!」
数メートル進んだところで、呼び止められた。
振り返ると、キム・ユニが小走りで彼の元まで駆けて来た。
「年上だから、気を使わないで下さい。その、敬語とか」
そう言った後、キム・ユニは大きく息を吸い込んだ。
「イ・ソンジュン、先輩」
途端にソンジュンの心臓は高鳴った。
照れくさそうに舌を出したキム・ユニの笑顔も、先輩という単語によって少し縮まった二人の心の距離も、彼を益々キム・ユニの虜にする。
「そうするよ」
ソンジュンは、こちらからも、名前で呼びかけたかった。
だが、女の子のような名前を呼ぶことを許されているのは、幼馴みのジェシンだけだ、と教えてくれたヨンハの言葉が、彼を縛る。
「君も、気を使わないで」
彼は、君、なんて余所余所しい言い方しか出来なくて、舌打ちをしたい気分になった。
かと言って、彼はヨンハのように、テムルと気軽に呼べなかった。
あれが大きいからテムルなど、下品極まりなく、到底受け入れがたい。
「うん、先輩」
キム・ユニは、パーカーの裾から細い指先だけ出して、小さく手を振る。
今度こそお別れだ。
ソンジュンはその場を離れがたくて、ぎこちなく手を振った。
キム・ユニも見送るつもりなのか、手を振りながら動かない。
互いに向き合った、この微妙な間合いに気不味くなりかけたところで、どうやらソンジュンが自分を見送るつもりらしいと気付いたキム・ユニが、ぺこりとお辞儀をして家に入った。
前庭を歩く後ろ姿は、殆どパーカーで覆われていて、小動物のようだった。
ただ、ハーフパンツから伸びる白いふくらはぎが妙に色っぽく見えて、ソンジュンは、それに気付いた途端に、ふくらはぎから目を逸らした。



ソンジュンは、右の拳で言うことを聞かない左胸を叩きながら、あと数十メートルの帰り道を進む。
やっとキム・ユニに会えた嬉しさと、どうやら時差ボケではないらしいキム・ユニへの興味で、心はもんどり打っている。

この動悸は、ずっと求めていた友を見つけた感激だ。
先輩と呼ばれて喜んでいるのも、友としての第一歩を踏み出せたからだ。
絶対に、男のキム・ユニが好きだからじゃない。

この事態に苦しくなった彼は、読書に逃げようと頭を振ったところで、ホームステイ先に到着した。
彼には、幸い、図書館から借りたハーバマスがあった。
彼にとっても難解な本だから、すぐに邪心も振り払えるだろう。
気を取り直してドアノブに手をかけたところで、しかし、ハーバマスを知っていると話してくれたキム・ユニの声が蘇る。
ああ、ハーバマスじゃ駄目だ。ドイツから離れてフランス哲学、いやこの際、哲学じゃなくて宇宙物理でも何でもいいから兎にも角にも読書に没頭しよう。
そう己に暗示を掛けて、ソンジュンは勢い良くドアを開けた。
誰も居ないと思った玄関には、同じく帰宅したらしいヨンハが靴を脱いでいた。
「おかえり」
ヨンハは、ソンジュンに笑顔を向けた。
頬の筋肉が緩んでいるような、目元は険しいような、なんとも形容しがたい顔つきで玄関に入ったソンジュンを、ヨンハは温かく迎え入れる。
「時差ボケ、しんどい?」
「まだ、頭がはっきりしなくて。すみません」
「俺もそうなるよ。韓国からカナダに来ると、きついよな」
さすがに二週間も時差ボケに悩んだ経験はない。
しかしヨンハは訳知り顔で頷いてやった。




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【作品名】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  花の四人衆 

2014/11/29 Sat. 13:16  tb: 0   コメント: 2

【成均館 二次小説】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine - 14(パラレル)  

成均館スキャンダル連載

ドラマ版成均館スキャンダルの人物が登場する、現代パラレル二次小説です。ご注意下さい。

- - - - - - - -

次の日、ユニは朝から騒がしかった。
ジェシンが何か言いかけても
「今忙しいから話しかけないで!」
と上を下への大騒ぎだ。
だが、彼女が忙しい理由を言わないから、ジェシンも訳がわからない。
触らぬ神に祟りなしとばかりに、忙しない彼女を遠巻きに見ながら、彼女が早起きをして用意した朝食に箸をつけた。
ユニは、大急ぎでシャワーを浴び終え、今は韓国から持って来た服をひっくり返しているところだ。
なんの因果か、初めてソンジュンに会った時も、二回目も、可愛くもなんともないパーカー姿だった。
今日こそは女の子らしい服装で、ユニに会いに来てくれるソンジュンを迎えたかった。
「このワンピースがいいかな。でも、張り切り過ぎって思われても恥ずかしいし」
ソンジュンがここへ来るのは、友人として本を貸すだけだから、パーカー姿とあまりにギャップがあり過ぎても、失笑されるかもしれない。
家にいるのにお洒落をしているのも、不自然だろう。
ヨンハは、ソンジュンはモテると言っていた。
高校生の時も、いやきっと小学生の時から、媚を売る女子に追いかけられていたことは想像に難くない。
そんな経験が、彼の異性を見る目を肥えさせている可能性だってある。
豹変したユニに、僕は友人として君に本を持って来たのに、と蔑視の目を向けるかもしれない。
ソンジュンに軽蔑される。
これだけは、なんとしても避けたかった。
ヨンハが言う通り、彼は堅物なのだろう。それは、彼が図書館で借りた本からも伺える。
けれど、同年代で、さらっと「ハーバマスを読んでいる」と言える人が、どれほどいるだろうか。
彼は、堅物という単語では形容が足りないほどに英明だ。
専門教育を受けずに、哲学書を読みこなしているのだから。
ユニは、異性としてのソンジュンに一目惚れをした。
今は、人間イ・ソンジュンにもっと近づきたいと思う。
だから、色気付いたなんて陳腐な理由で軽蔑されるのは、どうしても避けたいのだ。
「もう、どうしよう」
着替えの後は、メイクだって控えているのに。
髪だってブローしなくちゃ。
ユニは、ベッドに広げた服を掻き混ぜた。



「ユニ、入るぞ」
ジェシンがユニの部屋に入った時、彼女は、緊張した面持ちでベッドに腰掛けていた。
髪は、いつもの二倍の量のヘアトリーメントを使ってツヤツヤだけど、デニムに洗いざらしのシャツを合わせた姿は、わざとらしくないはずだ。
メイクも、変な色気が出ないように薄く仕上げた。
あとはソンジュンを待つばかり。
ユニは、“わざとらしくない”おはようの挨拶を、口の中でもごもごと練習していた、のだが。
「イ・ソンジュンがこの本を置いていったぞ」
差し出された本を見て、ユニは悲鳴のような大声を上げる。
「オッパ、なんで呼んでくれないの?」
「お前が忙しいって騒いでたから」
ジェシンは、あくまで親切心で本を受け取ってやったんだと主張する。
彼は、朝から一寸の会話の隙もないほど忙しく動いていたユニが、ソンジュンの用事に対応できる暇があるとは思えなかったのだ。
ユニは、部屋を飛び出した。
もしかしたら、まだ家の近くにソンジュンがいるかも知れない。
「ソンジュン先輩、お願い待って」
勢い良く玄関のドアを開けて、あたりを見回す。
けれど、ソンジュンの姿は見当たらなかった。
目の前には、のどかなバンクーバーの朝が、広がるばかりだ。
「めかしこんで、出掛けるのか?」
「オッパぁ」
今日もさわやかな晴天で、このまま外を眺めていたら、楽しそうに囀る鳥たちに八つ当たりのような恨み節まで飛び出してしまいそうだ。
ユニは、しょんぼりとドアを閉めて、その場にしゃがみこんだ。



ユニが玄関でへたり込んだ五分前に、ソンジュンはこの玄関で呆然としていた。
「キム・ユニさんに本を持って来ました」
約束通り、本を貸すために家を訪れたソンジュンを迎えたのは、ジェシンだった。
「ユニ!」
大声でソンジュンの尋ね人を呼んでくれたが、室内から反応はない。
彼は、申し訳なさそうに眉を下げた。
「あー、あいつ、今忙しいから、渡しておくよ」
「えっ?あっ!」
彼の良く日に焼けた手が、ソンジュンの手にある本をさっと奪った。
「ありがとな」
ソンジュンが食い付く暇もなくドアは無情にも閉まった。
ソンジュンはドアを見つめて唖然とするしかなかった。


悪気はねぇよ。
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【作品名】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  花の四人衆 

2014/11/30 Sun. 11:51  tb: 0   コメント: 0

【成均館 二次小説】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine - 15(パラレル)  

成均館スキャンダル連載

ドラマ版成均館スキャンダルの人物が登場する、現代パラレル二次小説です。ご注意下さい。

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ユニが騒がしかったように、今朝のソンジュンも落ち着きがなかった。
普段から冷静沈着な彼のことである。
誰に何を訴えるでもなく、テーブルの上のコーヒーを無意味に零すでもなく、淡々と朝食を取った。
だが、頻繁に腕時計を確認する忙しない視線だけは、隠せなかった。
一緒にテーブルについた美人姉妹とヨンハは、黙って目配せをし合っているが、キム・ユニとの約束で精一杯のソンジュンは、三人の訝しがる様子に気付く余裕がない。
彼は静かに朝食を終えると、部屋に戻って身支度を始めた。
あまり意気込んで、キム・ユニに気持ちが悪い人間だと思われたくはなかった。
あくまで、約束した本を貸すだけだから、軽く挨拶をしたら、すぐに図書館に向かうべきだ。
昨夜は、そう決意するも、頭の中は自然な挨拶の文言だとか、また先輩と呼ばれる期待だとか、キム・ユニの喜ぶ話題探しだとか、キム・ユニの髪型だとかで、埋め尽くされた。
ソンジュンは、キム・ユニの世界に触れたかった。
キム・ユニを通して見る世界は、きっと知性に満ち溢れているはずだ。
それに、年の変わらない誰かと、学問の話をしたことがないから勝手がわからないが、キム・ユニなら学問への情熱を受け止めてくれる気がする。
高校時代、韓国屈指の進学校だったにも関わらず、クラスメイトたちは難解な本に没頭するソンジュンを遠巻きに見て、ガリ勉は勿体無いと小馬鹿にする視線を送ったものだ。
そういう彼らとは、キム・ユニは根本的に違う。

まだ二回しか会ってないのに、こんなことを考えてるって知られたら、嫌われてしまうな。

感情が先走って制御が効かなかった。
友を得るのはこんなにも狂おしいものなのかと、ベッドの中で寝返りを繰り返した。



そうして一睡もできずに迎えた明くる朝、残念ながら天はソンジュンに味方しなかった。
昨夜から、ああでもないこうでもないと悩みに悩み抜いて、やっとキム・ユニの家に辿り着いたら、この顛末だ。
ソンジュンは、キム・ユニの前に立ちはだかるジェシンの存在に呆気にとられた。
ごく自然にユニと呼んだ、幼馴染みのジェシン。
君としか呼びかけられなかった自分とジェシンは、キム・ユニにとって全く違う存在なのだろう。
もちろん、まだ友と呼べるかも危うい立場の自分自身が、幼馴染みのジェシンを引き合いに出すのはおかしいとわかっている。
だが、二人の絆の強さを見せ付けられたようで、果たして自分とキム・ユニは、そんな風に分かり合えるようになるのだろうかと、焦燥感が湧いてくるのだ。

僕は、キム・ユニの髪型すら知らないのに。

パーカーのフードの奥の素顔は、とても可愛らしかったが、フードやキャップのつばの陰が邪魔してはっきり見えないのが残念だった。
しかし、それでも、キム・ユニの容姿はソンジュンの心を捉えて離さない。
彼がもっと知りたいと望むのは、キム・ユニの知性だけではない。
あの強い光をたたえた黒い瞳も、赤い唇も、ずっと見つめていたい。
夢にまで見た白い手を、ぎゅっと握りたい。
ジェシンはきっと、キム・ユニと微笑み合う日常を送っているのだ。
あの瞳を独占しているのだ。

僕だって。

そこまで考えて、ああ違う、僕が近づきたいのはキム・ユニの知性だと、ソンジュンは溜息をついた。
支離滅裂な思考が頭の中で堂々巡りしていて、疲弊しそうだ。
昨夜は、キム・ユニに会える期待で気持ちも持ち上がっていたが、今は、落胆のあまり、へたり込みたくなる。
ソンジュンは、こうして悶々と歩を進め、気付いたら図書館に到着していた。
ドイツ哲学は止めておこう、と肝に銘じながら書棚に近づく。
「あっ」
一つのテーブルを囲み肩を寄せ合い議論する学生たちの脇を通りかかった時、ふと一つのアイディアが浮かんだ。

キム・ユニを図書館に誘おう。

何も、あの家だけがキム・ユニの居場所じゃないはずだ。
ここなら、二人でゆっくりと語り合える。ジェシンに邪魔をされることもない。
突如として気持ちが上向いたソンジュンは、自然に上がる口角を隠すために、俯いた。
やはりキム・ユニも興味があるドイツ哲学が今日の気分だと、西洋哲学のコーナーに足を踏み入れる。
今日の一冊を決めるべく書棚を見上げたら、デニムのポケットに入れていた携帯電話が震えた。
それは知らないアドレスからのメールだったが、タイトルを見た瞬間、彼の心臓がどきりと波打った。
『キム ユニです』
心臓の音が耳まで届く。
焦りながらタップした画面に、メールの本文が映しだされた。
丁寧なお礼と謝罪が綴られていた。
ソンジュンは、今度、本の感想を聞かせて欲しい、と急いで返事をした。




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【作品名】Me And Those Dreamin' Eyes of Mine

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  花の四人衆 

2014/12/01 Mon. 03:46  tb: 0   コメント: 2

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