芙蓉の書-成均館スキャンダル屋根部屋のプリンス3days二次小説

JYJユチョン主演の韓国ドラマドラマ「トキメキ☆成均館スキャンダル」「屋根部屋のプリンス」「スリーデイズ(3days)」の二次小説ブログです。
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【屋根部屋 二次小説】風道 - 上  

屋根部屋のプリンス連載

水の畔の続編です。
春を思う水の畔、風道の順にお読み下さい。


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イ・ガクは、こんもりと土が盛り上がった墓の前で、佇んでいた。
彼は、週に一度はここへ来ている。
「チサン、書物をここへ」
静々とチサンが差し出した書物に、火が灯った。
ゆっくりと燃えてゆく書物を黙って見守るイ・ガクの背中は、頼りない。
「プヨンは書物が好きだった。退屈しないように、送ってやるのだ。私には、これぐらいしかしてやれない」
彼は、後ろに控えている臣下たちが、物言いたげにしていることは分かっていた。
振り向いてそう言うと、またプヨンの眠る墓を見つめた。
彼の目が微かに潤んでいるのは、煙のせいではない。
臣下は皆、彼の思いを理解していた。
だが、先を見ようとしない王世子が痛々しく、何とか救おうと忠告せずには居られない。
「いつまで、こうするおつもりですか」
「わかっておる。それ以上は、申すでない」
王世子暗殺の未遂事件から、一年が経っていた。
世子嬪の暗殺と思われていた事件は、彼女の実妹プヨンの命を差し出した犠牲で未遂に終わった、王世子暗殺の企てだった。
囚われの身となった世子嬪とその母が、プヨンを静かに弔いたいと申し出たが、イ・ガクはその申し出を跳ね除けた。

プヨンは、私の妻だ。

表向きは、王世子を救った人物として、丁重に弔った。
ホン家と敵対していた高官らは、プヨンも逆賊にすべしと強気の態度をとったが(彼女は、父や姉の罪を隠そうと企てたから、それも一理あったが)、民衆や儒者、王族のプヨンへの同情は深かった。
逆賊という言葉が出た途端に両の眼を見開き、ぎろりと睨み回した鬼気迫る王世子の様子に、高官らが怖気付いて追求の手を緩めてしまったことも、王世子を後押しした。
一瞬にして身寄りの失くなった彼女の葬儀を王世子が出すと明らかにした時は、民は至極当然のこととしてそれを受け入れた。
だが、イ・ガクの心は違った。
彼女は、彼にとって妻だった。
彼女の生前に、愛を交わしたことはない。
愚かしいことに、彼女の愛に気づいていなかった。
桃の木の傍らで詩を紡いだ時、己の指の背が彼女の頬を撫ぜた時、河を超えられぬと言って、逃げるように愛を打ち明けた時、彼女は何を思ったのだろうか。
世子嬪を失ったと思った時の慟哭は、プヨンへの誓いを守れなかった絶望だった。
もちろん、家族として愛していた世子嬪の死に対する悲しみもあったが、密かに誓った世子嬪を守るという約束こそ、プヨンへの愛の証だったのだ。
イ・ガクが三百年後の未来に飛んで、二人は結ばれた。
遅すぎた愛の成就に、後悔の念が消えることはない。



王世子の人を寄せ付けぬ態度を嫌厭して、プヨンの葬儀が終わるまでは、誰も彼のその後について口出しをしなかった。
だが、終わるやいなや、世子嬪を早く迎え入れろと助言した。
周りは、イ・ガクがプヨンを愛していたことを知らない。
良かれと思って、良縁を探す者も多かった。
プヨンの亡骸を埋葬した日の夜、彼は、傍らに控える三人の臣下に、これから喪に服すると告げた。
「チョハ、しかし……」
三人が、口ごもる。
「そなたらが申したいことは、わかっておるつもりだ」
もう義妹ですらない彼女の喪に服することに、いくら優秀なマンボとて、説明は付けられない。
「心の中だけの服忌ゆえ、気にするな。ただ、三年間は、肉を食わぬし、誰かを娶る話を聞くつもりはない。それだけだ」
その後、イ・ガクは流れ落ちる涙を隠そうともせず、一人にしてくれと背を向けた。




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【作品名】風道

【テーマ】 屋根部屋のプリンス二次小説  イ・ガク×プヨン 

2014/10/18 Sat. 20:28  tb: 0   コメント: 0

【屋根部屋 二次小説】風道 - 下  

屋根部屋のプリンス連載

頑なに肉を拒む王世子に、臣下の三人は代わる代わる忠告した。
「チョハ、お体に障ります」
「そなたらの作った“おむらいす”は食しているだろう?」
パク・ハが恥ずかしがった揃いのジャージを着て、肉と卵を使ったオムライスを食べるのが、彼らのささやかな楽しみだった。
「ですが……」
「パッカの“おむらいす”なら、プヨンも許してくれるはずだ」
力なく笑う王世子に、誰も反論できなかった。
「そなたらまで、妻を娶れと言わぬと信じているぞ」
「はい、チョハ」
イ・ガクは、その立場故に、静かにプヨンを悼みながら、パク・ハを思慕しながら、日々過ごすことは叶わなかった。
父の体は弱っている。王位継承の日も近いだろう。
『前の世子嬪が子を成さなかったのは幸いだったが、早く新しい世子嬪を迎えてお世継ぎを』
高官からひっきりなしに出る嘆願を、にべもなく無視する日々が続いていた。
「プヨンとパッカは、私が側室を迎えたら怒るだろうか」
「チョハ……」
臣下たちは、将来迎えることになるかも知れぬ正妻を側室と呼ぶ王世子の心中が、痛いほど分かっていた。
慰める言葉も見つけられず、ただ俯いている。
「私の嫡男でなくても、私のあとを継げるだろうに。良い策はないのか、ソン司書」
マンボは、黙っている。
「先の世子嬪のせいで病を患った、女人不審だと言って、逃げるのはどうだ」
そう言う王世子本人が、意味のない言い訳だと痛切に理解していた。
「良策を練る所存です」
「“子供を作れない体だ”でも良いぞ」
婚姻は政だ。跡継ぎだけの問題ではない。
様々な思惑が渦巻く朝廷内で、病だからと逃げ通せるはずもなかった。
だがマンボは、今だけでも王世子の慰めになればと、畏まりましたと小さく答えた。



イ・ガクは、プヨンを埋葬した後、彼女が身を投げた芙蓉池を幾日も眺めた。
彼女の好きだった芙蓉亭に残されていた手紙は、悲しみの中で愛を誓っていた。
彼女に、愛していると、言ってやれなかった。
止めどなく溢れる涙は、留まるところを知らない。
「私が国だ」
パク・ハに言い返したことがある。
王世子でなかったら、この池に身を投げて、死んでしまいたい。
我が儘が許されぬ身ゆえに、ここにこうして立っている。

パク・ハに会いたい。今すぐに、パク・ハに触れたい。

「記憶があれば永遠に共にいられる」
彼女に告げた言葉は真理だ。
だが、記憶だけを頼って互いに寄り添うことがこんなにも狂おしいとは、あの時は知らなかった。

――命を絶ちたい。会いたくてたまらない。どうか幸せに。どうか元気で。

三百年後のパク・ハに、愛を綴った。



穏やかな風が、四人のいるプヨンの墓を通り抜けた。
風は、彼らの服の裾を柔らかく揺らしている。
「私の墓は、あの場所に建てよ」
イ・ガクが、風が吹く方角に振り返って言った。
「天蔵山(チョンジャンサン)ですか?」
「あそこなら、プヨンのことがよく見える」
漢陽の街中の盛り上がった地形の、天蔵山と名付けられた小高い場所は、プヨンの墓の一帯を一望出来た。
「プヨンがパッカとして生まれ変わるまで、あそこで見守ってやりたい」
「はい、チョハ」
三人は深々と頭を垂れた。
天蔵山から下りてくる風が、温かく四人を包んだ。




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【作品名】風道

【テーマ】 屋根部屋のプリンス二次小説  イ・ガク×プヨン 

2014/10/19 Sun. 14:12  tb: 0   コメント: 0

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