芙蓉の書-成均館スキャンダル屋根部屋のプリンス3days二次小説

JYJユチョン主演の韓国ドラマドラマ「トキメキ☆成均館スキャンダル」「屋根部屋のプリンス」「スリーデイズ(3days)」の二次小説ブログです。
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【屋根部屋 二次小説】春を思う - 上  

屋根部屋のプリンス連載

プヨンは、実姉の世子嬪、ファヨンの相手をする為に宮殿にやって来た。
しかし、焦っていたのだろうか。指示された時間よりもずっと早く着いてしまった。
ファヨンは、プヨンが約束を守らなことを、ひどく嫌う。
特に今日は、王世子、イ・ガクとファヨン二人の相手をする予定だったから、尚更、注意を払う必要があった。
イ・ガクが、妻への笑顔と変わらぬ笑顔をプヨンに向けることが、ファヨンは気に入らないのだ。
プヨンは芙蓉亭に誰もいない事を確かめると、階段を上がって行った。
彼女はここに飾ってある屏風が好きだった。
静かな佇まいが、彼女の心を落ち着かせてくれるから。

チョハの御心は世子嬪媽媽だけのものなのに。

プヨンは、誰が望んでも叶わない世子嬪という立場で、イ・ガクの愛を一身に受けてもなお妹を警戒する姉を、愛していた。
頬にやけどを負い、嫁ぐことの出来ないプヨンは、姉を訪ねる以外は家に閉じこもるほかない。
怖気づかずに外の世界に出て行けるのは、姉のおかげだった。
イ・ガクがプヨンを厚遇するのは、そんな彼女を哀れむがゆえ。それは彼女が一番良くわかっていた。
愛する妻の妹だから情も湧くのだろう。
結局、プヨンの想いは出口もなく行く先もなく、ただ漂うだけだ。
だから、今日のような穏やかな春の日には、蝶になって自由に飛んで、夏が来る前に散ってしまいたくなる。

白、橙、黄。どの色がいいかしら。

来世は蝶になろう。
頬に火傷を負い、許されぬ愛に身をやつすのが天命ならば、蝶になることもまた、天は許し給うはず。
プヨンは屏風に描かれた蝶を指でたどった。
「そこにいるのは、義妹か?」
背後から聞き慣れた声がした。
こんな時間に誰もここを訪れるはずがないと油断していたプヨンは驚き、肩を揺らした。慌てて低頭する。
「プヨンでございます」
「ここにいたのか」
「早く着いてしまいましたゆえ、こちらでお待ち申し上げておりました」
イ・ガクは、芙蓉亭から下がる素振りを見せるプヨンを引き止めた。
「下がらなくとも良い。そなたは今日、私と嬪宮の相手としてここへ来た。時間まで、私と話していれば良かろう」
それでも下がろうとするプヨンを、イ・ガクは笑った。
「はは。嬪宮がいないと不満か?仲の良い姉妹だな。では、ここに嬪宮も呼ぶとしよう」
イ・ガクは芙蓉亭の外に控えている従者に、予定が変わったことを告げる。
彼の楽しげな様子とは裏腹に、また姉の機嫌を損ねてしまうことを思うと、プヨンは憂鬱になった。
二人の付き合いは長い。プヨンの変化を敏感に感じ取ったイ・ガクは、わざと明るい声で問いかけた。
「顔を覆っている絹布の刺繍は、そなたが刺したものなのか」
「左様で御座います、チョハ」
「嬪宮の刺繍も見事だが、そなたの腕前も素晴らしいな」
まっすぐに見つめてくるイ・ガクの視線に耐えられず、プヨンはうつむく。
「チョハ、お掛けくださいませ」
足を踏み出したイ・ガクにプヨンは椅子をすすめた。
「もっと近くへ。刺繍をよく見せてくれ」
イ・ガクは腰を下ろさなかった。
プヨンも動かず、低く頭をたれる。
これでは、刺繍どころか彼女の顔すら見えない。プヨンの振る舞いに腹が立ち、イ・ガクは更に前へ進んだ。
「なりません、チョハ」
プヨンは体を起こすと、イ・ガクに向き合ったまま後ろに下がった。
逃げるプヨンを、イ・ガクは追う。
「なぜだ」
イ・ガクが一歩進めば、プヨンも一歩退く。
埋まらない距離への苛立ちを隠さず、イ・ガクは迫った。
「世子嬪媽媽以外の女人を簡単に近づけてはなりません」
「そなたは義妹だ。問題なかろう」
イ・ガクは、腕を伸ばせばプヨンに触れられるところまで、距離を詰める。

お願いだから、私を見ないで。

これは、許されぬ想いへの天罰なのだろうか。
あと少しでも近づかれたら、きっと、恋焦がれる心を見透かされてしまう。
プヨンは傍らにある屏風の陰に隠れた。
「チョハ、お願いでございます。足をお止め下さいませ」
プヨンが頑なすぎるからだろう。イ・ガクも折れなかった。
「私が良いと言っているのだ。こちらへ参れ」
プヨンはじっと動かない。
しびれを切らしたイ・ガクが屏風の後ろに入り込んだ。
逃げ場を失い俯くプヨンの顎を絹布ごと掴み、上を向かせる。
「やはり、見事な刺繍だ」
イ・ガクは刺繍の上から、プヨンの左頬を撫でた。
「プヨン、次はちゃんと言うことを聞くのだぞ」
プヨンが詫びるために頭を下げようとするのを許すまいと、イ・ガクは彼女の顎を掴んだ。
彼の右手は、今や顔を覆う絹布の中で、プヨンの肌に直接触れている。
「チョハ・・・」
愛しい人が触れているところだけ、針を刺されているかのように、チクチクと痛んだ。
やはり、これは天からの罰なのだ。

あんなにも焦がれた愛しい人の手が、針のようだなんて。

イ・ガクは人差し指の背で、プヨンの火傷痕を辿る。
何度も往復され、プヨンの瞳は耐え切れずに涙を溜めた。
イ・ガクの親指が、その涙を掬う。
プヨンは、もう抵抗をやめ、目の前にいる愛する人に身を任せた。
彼の額から鼻にかけての男らしい造形と、今は少し寄せられている眉を、プヨンは綺麗だと思った。
なにか音を発するために、男にしては赤い唇が開かれたが、小さく息を吐き出しただけで、閉じられた。
それからまた唇が開かれ、イ・ガクはただ一言、呟いた。

「そなたは美しい」

先に我に返ったのはプヨンだった。
「すぐに世子嬪媽媽がいらっしゃいます」
「・・・そうだな」
イ・ガクはぎこちない笑みを作ると、少しずれてしまった絹布を直してやる。
「世子嬪媽媽のご到着でございます」
従者の告げる声に促され、イ・ガクは芙蓉亭を降りて行った。




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【作品名】春を思う

【テーマ】 屋根部屋のプリンス二次小説  イ・ガク×プヨン 

2014/02/10 Mon. 22:16  tb: 0   コメント: 0

【屋根部屋 二次小説】春を思う - 下  

屋根部屋のプリンス連載

イ・ガクは空を仰ぎ見て、今日は特別に天気が良い、と静かに言った。
ファヨンは芙蓉亭から降りてきた二人の様子がおかしいのを訝しみ、プヨンに咎めるような視線を送っていたが、イ・ガクの提案を聞いてすぐに上機嫌になった。
「庭を巡るとしよう。嬪宮は桃の花を見たいと言っていただろう?」
「覚えていてくださったのですね。嬉しゅうございます」
距離をとって付き従うプヨンを振り返り、ファヨンは勝ち誇った笑みを浮かべる。
春の日差しは心地よく、イ・ガクはそれを味わいながら、ゆっくりと歩を進めた。
庭に植えられた様々な木々を楽しめるように、緩やかな曲線をつけて作られた歩道を、一行は静かに辿った。
ファヨンはイ・ガクが何か言うのを待つが、彼からの言葉はない。
誰も話さないまま、桃の木の植えられている場所に一行は到着した。
ファヨンが期待した通り、桃の花は満開だった。
反り返る枝は、風が吹いたら折れてしまうのではないかと心配になるほどに、満開の花を重たそうに支えていた。
「本当に見事ですこと。チョハもそうお思いになりませんか?」
ファヨンの問いかけに返事はなかった。
イ・ガクは眉を寄せ両手を後ろで組み、桃の木に見入っていた。
「あら、あまりに見事で見惚れていらっしゃるのね」
ファヨンは返事がないことを取り繕うように言った。
しかし、イ・ガクは花々を見つめたままだ。
ファヨンは、いつまでも自分に注意を向けない夫の袖を引っ張った。
「チョハ、私は桃の花に嫉妬してしまいそうです」
「嬪宮は、かように幼いことを申すのか」
イ・ガクは静かに笑う。
「桃花 歴乱として 李花 香ばし」
「え?」
イ・ガクが何かつぶやいたが、ファヨンにはその意味がわからない。
彼女の問いかけには答えず、イ・ガクは後ろに控えるプヨンに向かって歩いた。
「プヨン、この詩を知っているか?

 草色 青青として
 柳色 黄なり」

 --芽生えたばかりの草は青青として 柳の新芽は黄金色に輝く

「はい。存じております」
「では、続けてみよ」

「桃花 歴乱として
 李花 香ばし」

 --桃の花は一面に咲き乱れ、すももの花は良い香りを漂わせる

プヨンが言い終えると、イ・ガクが次の句を引き取った。

「東風為に
 愁い吹き不去ず」

 --春の風は私の憂いを吹き払ってはくれない

男女の機微をうたった詩ではない。
にも関わらず、イ・ガクが、芙蓉亭での出来事をこの詩に込めていると思うのは、うぬぼれだろうか。
プヨンは、胸が詰まり黙り込んだ。
「忘れたのか?」
「いえ・・・」
「では、申してみよ」

傍にいるイ・ガクがやっと聞き取れるような小さな声で、プヨンは応えた。

「春日偏えに能く
 怨みを惹て長し」

 --むしろ春の日は私の悩ましい気持ちを煽るばかりだ

「やはり、そなたは完璧に憶えていたな」
「恐れいります、チョハ」
「春日偏えに能く怨みを惹て長し」
イ・ガクは最後の句を繰り返した。


なぜ、芙蓉亭でそなたを追ったのかわからない。
しかし、そなたは、いつも気にかかる存在だ。
今日のような穏やかな春の日差しの下では、そなたの存在が益々悩ましい。


「チョハ、今の詩はどんな意味でございますか?」
二人だけが理解している漢詩の応酬に言い知れぬ危機感をおぼえ、ファヨンは二人の間に割って入った。
「嬪宮には難しいな」
「まぁ、チョハったら」
夫と妹をこれ以上近づけてはいけない。
池に参りましょう。ファヨンは、イ・ガクに散策を続けるように促す。
プヨンも姉のそんな思惑を感じ取り、静かに申し出た。
「私はこちらで失礼致します」
イ・ガクは彼女を引き留めなかった。さあ、と誘うファヨンに笑顔を作る。
二人は肩を並べ、先へ進んだ。
イ・ガクに撫でられた火傷の痕がまたチクチクと痛み、プヨンは頬を押さえた。

悩ましいのは私のほう。
来世と言わず、今すぐ、蝶になってしまいたい。
この庭を自由に飛んで、ほんの一時だけ、あなたの肩で体を休めても良いでしょうか。
そのあとには夏が来て、私は消えて、なくなるのです。


プヨンは、遠ざかる二つの背中を、いつまでも見送った。






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【作品名】春を思う

【テーマ】 屋根部屋のプリンス二次小説  イ・ガク×プヨン 

2014/02/11 Tue. 17:55  tb: 0   コメント: 3

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