芙蓉の書-成均館スキャンダル屋根部屋のプリンス3days二次小説

JYJユチョン主演の韓国ドラマドラマ「トキメキ☆成均館スキャンダル」「屋根部屋のプリンス」「スリーデイズ(3days)」の二次小説ブログです。
『目次』、『小説のテーマ』または『ランキング』からお進み下さい。
また、大人小説(R18)の閲覧はご自身のご判断でお願い致します。

> 一ヶ月感謝企画

テーマ: 一ヶ月感謝企画 一覧

アンケート結果発表!  



週末は、ファンミーティングでしたね。
こちらに来て頂いている皆さまの中で、行かれた方はいらっしゃるのでしょうか?

さて、本題です。
皆さま、ご協力ありがとうございました。
実は、すべてのネタがノープランなので、ドキドキしながら状況を見守っていました。
結論を先に。
今回の企画は、お約束通り一位のお話を書きます。
が!!!
あまりに皆さまのコメントが熱かったので、時期はお約束できませんが、全て書こうと思います。


ユチョンドラマ二次小説アンケート結果


いただいたコメントへの返信です。
成均館スキャンダルは、圧倒的に「ソンジュンの嫉妬」が人気でした。
なんだか「清廉潔白で見目麗しい青年です」と擁護してあげたくなるぐらい。
いえ、soyteaもちゃんとわかっています。
そんな彼が嫉妬するからいいんですよね。
屋根部屋のプリンスの方は、「いろいろな制約を忘れて、幸せいっぱいに過ごして欲しい」という皆さまの優しさが伝わってきました。
ドラマは、あっという間にお別れが来てしまってので、せめて小説の中だけでも、存分に愛し合って欲しいですよね。

■一位 「ソンジュン×女人姿のユニ」
>女人姿のユニに、魂を抜かれるソンジュン!他の人に見せまい・渡すまいと嫉妬メラメラのソンジュン♪

ソンジュン萌えのキーワードが全て入っていますね。ご期待に添えるでしょうか?がんばります。

>成均館が大好きです!楽しみにしています。

ありがとうございます。

>女性姿のユニにデレデレして手を握ってしまうジェシンに対して嫉妬するソンジュン

手を握ってもらいますので、是非読みに来て下さい。

>女人姿のユニちゃんと、堂々とデートさせてあげたいです(^^♪

ごめんなさい!今回、デートを入れられませんでした。が、冒頭でお約束したとおり、必ず書きますので、お待ちいただければ幸いです。

>もう、絶対このお話を読んでみたいです

ありがとうございます。


■二位 ソンジュン×ユニ 大人小説

>ソンジュンの嫉妬と焼きもちからのラブラブ話が好きです!
>ソンジュンの焼きもち


基本は「ソンジュンの焼きもち」!しっかりメモをしておきました。お待ち下さい。

>夜中に婢僕庁へこっそり行ったが、ヨンハとジェシンがいて行水になったが二人が居なかったら?

婢僕庁、了承いたしました☆

>たのみますーー御願いします。

ごめんなさい。長い目でお待ち下さい。必ず書きます。

>麗しい妓生姿にムラムラとしたソンジュンが見たいです!

ドラマの妓生姿は本当に可愛かったですよね。了承いたしました☆

■三位 ソンジュン×ユニ 卒業後

卒業後といえば、あの「艶本持ち込み」のせいで、私は大人小説を書けないでいます。
どう処理すればいいんでしょうか・・・。

>でも、どれも全部気になります\(//∇//)\

ありがとうございます。少しずつ書きますので、楽しんでいただければ幸いです。

>結婚後ユニが女性としてどのように生きていくのかが読みたいです。

ドラマの最後、ちょっと消化不良ですよね。がんばります。

>大人小説も捨てがたいのですが(笑)、卒業後の二人の日常読んでみたいです!

ドラマでは、ユニは、男性としても女性としても充実した様子のラストでしたよね。
幸せな二人が書けたらアップします。

>いつも楽しく読ませていただいています。楽しみにしてま~す♡

ありがとうございます。お待ちくださいませ。

>お話をいつも楽しみにしています。原作の隙間ともいうべきところを、埋めていただけたら嬉しいです。

ありがとうございます。
私なりに「こうだったらいいな」というストーリが作れれば、と思っています。


■四位 イ・ガク×パク・ハ ラブラブ

>イガクとパクハがめっちゃ好きです。幸せいっぱいの2人のお話がよみたいです

ドラマでは、恋愛に一途になれない二人が、とても切なかったですね。「幸せいっぱい」、がんばります。

■五位 イ・ガク×パク・ハ 大人小説

>はじめまして(^-^)いつも楽しませて頂いてます。2人で初めての旅行が読みたいです。

はじめまして。旅行ですね♪パク・ハがガイドをやった時も、なんだかんだ言って、ふたりとも楽しそうでしたよね。

>どんなエピでも楽しみにしてます♪( ´θ`)ノ

ありがとうございます。

>楽しみにしてます!

ありがとうございます。

■六位 テヨン×パクハ はじまり (追加)

>テヨンとパクハのそれ以前

申し訳ありません。もう一度教えていただけないでしょうか。
今連載中の「はじまり」とは別のストーリーで、二人の出会いをのことをおっしゃっていると思うのですが、「それ以前」がわかりません。
お手数ですが、この記事の下部にコメントへのリンクが有りますので、もしこれを読んでいらっしゃいましたら、非表示でかまいませんので書き込みをお願い致します。

■七位 テヨン×プヨン (追加)

>テヨンが過去に戻ってしまいプヨンに心惹かれ

テヨンがタイムスリップ!了承いたしました☆

今回のこの企画、結局、私が一番楽しんでしまったような気がします。
しかも、こんな素敵なアイデアをたくさん頂戴してしまって、恐縮しきりです。
時間はかかりますが、せっかくのアイデアをムダにしないように形にしていきたいと思いますので、のんびりお付き合い下さい。
ありがとうございました!




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【テーマ】 お知らせ.お知らせ  一ヶ月感謝企画 

2014/01/27 Mon. 01:25  tb: 0   コメント: 4

【成均館 二次小説】その唇が誘うから - 1 (感謝企画)  

成均館スキャンダル連載

中二房の三人との毎日は、楽しいことばかりだ。
ヨンハは、ハ・インスと過ごしてみたものの権力欲ばかりで退屈だった昨年と違い、充実した日々に満足していた。
何より、ハ・インスはいけ好かない奴だが、中二房の三人は違う。
真の友情を彼らと分かち合うことが出来る幸運に、ヨンハは感謝した。
その友人達に、日頃の恩返しをするのは、君子として当然の行いである。
ヨンハは今日も上機嫌で中二房に乗り込んだ。
「宴を用意した。出かけよう」
すると予想通り、三者三様の否定の言葉が返って来た。
「僕、これから尊経閣に行くんです」
「どういった理由で宴を催すのですか?」
「めんどくせぇ」
「あぁ、なんでお前たちの口からは、いつもつまらない言葉ばかり出てくるんだ」
ヨンハは強引に三人を部屋から引っ張りだし、今日は絶対に来い、と稀に見る気迫で迫る。
三人は思わず頷いてしまった。
「でもいつも『今日は絶対に来い』だよね」
ユニがソンジュンに耳打ちしたのを、ヨンハは聞き逃さなかった。
「なにか言ったか?テムル」
「・・・いえ、何も」
かくして三人は大人しくヨンハに続き、気づけば牡丹閣に到着していた。



「キム・ユンシク様!チョソンに会いにいらしたの?」
妓生が駆け寄り、ユニの手を取った。
「本当に、綺麗なお方でございますこと」
もう一人加わり、うっとりとユニを見つめた。
きまりの悪いユニは、ヨンハに助けを求める視線を送る。
すると、ソンジュンが妓生からユニの手を奪い返した・・・少なくともヨンハにはそう映った。

カラン、お前は、誰彼構わず嫉妬するのか?

これは増々おもしろくなりそうだ。
「今日は、四人だけで寛がせてもらうよ」
ヨンハは妓生たちを両腕に抱きながら、押さえておいた部屋に向かった。
「あら、でも、チョソンはユンシク様に会いたいはずよ」
「それはテムル次第だな。ところで、頼んだものは用意してあるのか?」
「ええ。でも、何に使うんですか?」
「ひ・み・つ」
得意の色気でふたりを煙に巻き、ヨンハは部屋の扉を閉めた。
「今日は俺のおごりだ。楽しんでくれ」
わざわざ牡丹閣までやって来て、美酒を楽しもう、などと平凡な計画で満足するヨンハではない。
ここまでの流れは、計画通りで申し分ない。
三人同時に喜ぶ策を考えてあるのだ。ヨンハは微笑んだ。
まず、イ・ソンジュン。
彼は近頃、ヨンハやジェシンがほんの少しユニに触れただけで、彼らに射るような視線を向ける。
しかしソンジュンにその自覚がないから、質が悪い。
彼は、君子らしく涼しい顔を保てていると思っているのだ。

まるで、自分の女気取りだな。

そして、ムン・ジェシン。
最近は、彼もおかしな行動を取る。
大した段差でもないのに手を差し伸べたり、たった一冊の本を持ってやったり、妙に過保護なのだ。

それで庇っているつもりか?逆に女って言って回っているぞ。

女のユニが気になるジェシンと、自分の感情を整理できずにいるソンジュン。
彼らは、同じ思いを持つ者同士の勘が働くのだろうか、しょっちゅう無言で牽制し合っている。
しかも、ふたりのお目当てのユニが、当人も恋をしているにもかかわらず鈍感だから、面白さも倍増だ。

ああ、こんな愉快な友人達をもてなさないなんて、ク・ヨンハの名が廃る!

「テムル、お前の服を隣の部屋に用意しておいたから、着替えてこい」
ヨンハは、ユニの背中を押して続き部屋に突っ込んだ。
「着替えなんて・・・・・・先輩、これはなんですか!」
壁の向こうで、ユニが叫んだ。
ソンジュンが乱暴に扉を開け、ジェシンも慌てて覗き込む。
「先輩!」
ヨンハの「三人同時に喜ぶ策」、それはユニが妓生になることだった。

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【作品名】その唇が誘うから

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  花の四人衆  一ヶ月感謝企画  ソンジュン×ユニ 

2014/01/28 Tue. 19:11  tb: 0   コメント: 2

アンケート結果発表!追記   



前回の記事で、皆さまのコメントに対する私からの返信を載せましたが、一項目、抜けていました。
せっかく書いていただたコメントを無視する形になってしまい、申し訳ありません。
こちらも、宣言通り必ず書きます。
素敵なアイディアをお寄せ頂き、ありがとうございました。
また、本当に申し訳ありません。

■ソンジュン×ユニ 就学中

>ユニが女の子とわかった後(触れたい、キスしたい、やりたい!?と悶々としているソンジュン様

「きれいな学士様(スンドリ談)」と思い込んでいた時も悶々としたソンジュンですから、女の子とわかった後は、さぞ辛かったのではないでしょうか。妄想が膨らみますね♪

>ユニにキスされた後ぐらいの話 ドラマ編

やっとユニの気持ちを聞けた直後は、嬉しそうでしたね♪ 了承いたしました。

>ユニが女性と自分だけ知っていると思っているソンジュンを。男の嫉妬お願いします。

やっぱり「嫉妬」!了承いたしました。




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【テーマ】 お知らせ.お知らせ  一ヶ月感謝企画 

2014/01/29 Wed. 17:15  tb: 0   コメント: 0

【成均館 二次小説】その唇が誘うから - 2 (感謝企画)  

成均館スキャンダル連載

「先日のテムルの妓生は、見事だった。でも、残念ながら、コロはテムルを見ていない。俺も、じっくり味わうには至らなかった」
妓生の衣装を床に叩きつけたユニに、ヨンハは今日の計画を打ち明けた。
「そこで、だ。今日は、妓生のテムルに、宴を盛り上げてもらおうと思う」
「お断りです!あの時は、あれしか方法がなくて、仕方なかったんです」
ユニは必死になった。
毎日懸命に隠しているのだ。こんな冗談で女人と気付かれたら堪らない。
「キム・ユンシクは立派な学士です。戯れに妓生の格好をさせるなんて、彼に失礼です」
ユニは大きく頷くと、ソンジュンに体を向けた。
「イ・ソンジュン!僕、もう女の格好はしないって、君と約束したよね?」
「約束した」
「友との約束を破ることは出来ません。信に背くことになります!」
「カラン、独り占めとはずるいじゃないか。さては、テムルに惚れたな?」
「何を言ってるんですか!悪ふざけが過ぎます!」
ソンジュンは、顔を赤くして応戦する。
「かわいそうだろ!」
ジェシンは今にもヨンハを殴りそうな勢いだ。
だが彼らの反応は想定内、事もなげにヨンハは続けた。
「信に背く、ね。先輩がこれを着ろと言ってるんだ。礼に背くことにならないのかな?」
「先輩、無茶を言わないで下さい」
ソンジュンがユニを背中でかばったのと、ジェシンがそのユニの肩を抱いたのは、ほぼ同時だった。
「テムル、帰ろう」
背を向けたジェシンの肩を、ソンジュンが掴む。
「帰らないのか?」
「・・・帰ります」
ソンジュンがユニを引っ張り、ユニは少しよろめいた。

また、始まった。

ユニが着替える前からこれだ。ヨンハはおどけて切り出した。
「わかった、わかった。お前が妓生になりたくないなら、妓生を呼ぼう!カラン、妓生遊びをしたことはあるか?」
ヨンハは、とりあえず宴を始め、場が盛り上がってきた時にユニに衣装を渡すのも悪くない、と軌道を修正した。
この臨機応変さは、ヨンハの自負するところだ。
しかし、この提案を聞いて、ソンジュンが反応するより先にユニが飛び上がった。
「だめ!ダメです!」
「ん?テムルはチョソンがいるのに、カランはだめなのか?」
「とにかく、ダメです!」
今度は、ユニがソンジュンの前で両手を広げる。
すると突然、ヨンハの背後にある扉が開いた。
入室するなり騒がしい四人を訝しがって、妓生のエンエンが様子を見に来たのだ。
「まぁ、大騒ぎして、何かありまして?」
彼女は、ヨンハの肩越しに部屋の中を窺う。
「あら、もしかして左議政様の御子息?」
「イ・ソンジュンだ。美しいだろう?」
「ぜひご一緒させていただきたいわ、イ・ソンジュン様」
エンエンがソンジュンに流し目を送ったのを見逃さず、ヨンハはソンジュンの首に腕を回した。
ソンジュンはその腕をどけようと試みたが、ヨンハはさらに力を込める。
結局、ユニがエンエンを部屋の外に促した。
「ごめん、エンエン。今日は四人だけで過ごさせてくれ」
ここに至ってヨンハは悟った。
ユニに着替えを承諾させる為に必要なことは、彼女を説得することではない。
「妓生のいない牡丹閣の宴なんて、俺は認めない」
ユニが絶対に首を縦に振る方法、それは、ソンジュンを人質に取ることだ。
「テムル、二択だ。妓生をやるか、妓生を呼ぶか」
ユニは、ソンジュンを見上げる。
ソンジュンを捕まえるヨンハの腕に、更に力がこもった。
「・・・着替えてきます」
ユニは消え入るような声で返事をすると、隣の部屋に入っていった。



続き間だから、壁は薄い。
生々しい衣擦れの音が、こちらまで聞こえる。
ソンジュンは、波打つ心臓を手のひらで押さえ、せり上がってくる唾も、ごくり、と飲み込んだ。
ジェシンも額に汗をかき、口元を手で覆っている。
ユニの着替えはなかなか終わらず、それが余計に二人の体温をじりじりと上昇させた。
もう限界だと言わんばかりにソンジュンが天井を仰ぎ見た頃、ユニは扉を開けた。
桃色で統一された衣装は、ユニの整った顔立ちに可憐さを添えている。
ジェシンもソンジュンも、己が男だということを、否応なしに意識せざるを得なくなった。
ユニの唇に目が行ってしまうのだ。
笠から垂らされた薄衣越しだが、紅をさしたであろう唇の柔らかさが、手に取るように感じられる。
「テムル、テムル~。見事だ!なぁ、コロ?」
「あ・・・うん・・・ひっく」
早くもしゃっくりが出てしまい、ジェシンは自らの襟元を掴んだ。
「カランも、何か言えば?」
ユニは笠の奥からソンジュンを見つめた。
ユニの黒目がちの瞳とソンジュンの視線がぶつかった途端、あの夜しっかりと抱きとめた細い腰を思い出し、ソンジュンは耳まで一気に真っ赤になった。

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【作品名】その唇が誘うから

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  花の四人衆  一ヶ月感謝企画  ソンジュン×ユニ 

2014/01/29 Wed. 19:00  tb: 0   コメント: 0

【成均館 二次小説】その唇が誘うから - 3 (感謝企画)  

成均館スキャンダル連載

「笠は邪魔だ。綺麗な顔がよく見えない」
ヨンハはユニの笠を外し、座敷に促した。
「さ、酌をして回って」
片目を瞑り、自分の碗を上げる。
残りの二人も黙り込んだまま、席に着いた。
幸いしゃっくりは止まり、ジェシンは安堵した。
ユニは、まず、ヨンハに酒を注ぐ。
「先輩、どうぞ」
「妓生は先輩とは言わないが、・・・まぁ、いいか」
次はジェシンの番だ。ユニはジェシンの傍らに腰掛けた。
「汗をかいてますね。大丈夫ですか?」
額のあたりにユニが右手を寄せる。ジェシンは体を後ろに引いた。
「先輩?」
「・・・・・・ごめん」
幸いユニはあまり気にしていないようで、ジェシンにも酒を注いだ。
「コロ先輩、これもどうぞ」
ユニは、ジェシンが汗を拭けるようにと布巾を差し出した。
「あぁ、ありがとう」
冷や汗なのか、火照りなのか。彼女がそばにいる限り、汗が引く気がしない。
ジェシンは彼女の手から布巾を取った。否、取ろうとした。
布巾に指をかけたとき、ユニの細い指をも掠り、ジェシンは思わず握ってしまった。
それは一瞬だった。
ユニの手がびくっと揺れ、ジェシンも弾かれたように手を離す。
「テムルの妓生は完璧だ。女だと錯覚しちゃうよなぁ?コロ」
ヨンハの助け舟がなかったら、不自然な沈黙が訪れ、二人とも気まずい思いをしていただろう。
「何を言ってるんですか」
ユニは改めてジェシンに布巾を渡し、ヨンハを諌めた。
しかし、ヨンハはもう、ジェシンもユニも見ていない。
彼の視線の先には、卓子の上で両手を握りしめジェシンを睨むソンジュンがいた。
「ほら、テムル。カランの番だぞ」
ユニは、ジェシンとソンジュンの間に座り、ソンジュンの碗に手をかけた。
「僕の左側は食事の邪魔だ。右に来て」
「そんなにくっつかないよ」
ユニは文句を口にしつつも、素直に移動する。
移動した当人はわかっていないが、ソンジュンがユニとジェシンの間に入る形になった。
ヨンハはソンジュンの真意に気づき、楽しそうに酒を口に含んだ。
ユニは改めてソンジュンの碗を引き寄せる。
「君には注がないよ?」
ユニはいたずらっ子のように笑って、碗を手で覆った。
「テムル、もっと女らしい話し方をしなきゃ」
「そうですか?うーん・・・」
ユニは指で唇を摘んだ。何か考え事をするときの彼女の癖だ。
ただでさえ紅で艶が増しているのに、そんな風にいじられたら堪らない。
ジェシンは酒を煽った。
女人に慣れていないソンジュンは、動揺をごまかすことも出来ず、唇を凝視している。
「手始めに、『君』っていうのを直せ」
「じゃあ・・・イ・ソンジュン様、お酒はほどほどにね?」
返事がない。ユニはもう一度声をかけた。
「イ・ソンジュン様?」
ユニはきつく握られたままの拳に触れた。
「・・あ・・・」
唇を凝視していたソンジュンは、これで我に返った。
返事をしようとするが、喉の奥が張り付いて声が出ない。
きっと、喉が乾いているせいだ。ソンジュンは、自ら酒に手を伸ばした。
「もう!お酒はダメだってば!」
ソンジュンとユニのやり取りに、ジェシンは焦った。
ソンジュンの世話を焼こうとするユニは、男のふりをすることを忘れてしまったのだろうか。完全に女だ。
これ以上ソンジュンのそばにいたら、ヨンハにまで女であることが知れてしまう。
「・・・酒ぐらい、飲ませてやれ」
「でも・・・あ、先輩のお碗が空っぽですね」
ユニがジェシンに微笑んだ。
ソンジュンは、思わず目を背けた。

先輩に微笑む君は、見たくない。

蔵破りをして以来、この説明の付かない感情が度々巻き起こり、ソンジュンの心をかき乱す。
その度に、初めて得た友人を取られたくないのだ。幼稚な自分は友情に慣れていないのだ。と自らを納得させて来た。

キム・ユンシクは、同室生。
同室生なんだ、イ・ソンジュン。

「先輩、僕がお酌しますよ」

行かせない。

立ち上がりかけたユニの手首を、ソンジュンが捕まえた。

ああ、違う。今、キム・ユンシクは同室生だ。と言い聞かせたばかりなのに。

緩んだソンジュンの手から、ユニは手首を抜いた。
「君はお酒に弱いじゃないか」
ソンジュンが酒をねだっていると勘違いしたユニは、口を尖らせる。
「帰りに苦労するのは、僕なんだからね」
ユニは再び腰を上げた。酒を取ろうとしたユニの手を、ソンジュンは捉えた。

やっぱり、ダメだ。行かせない。

今度は握った手を緩めなかった。

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2014/01/30 Thu. 19:00  tb: 0   コメント: 2

【成均館 二次小説】その唇が誘うから - 4 (感謝企画)  

成均館スキャンダル連載

明らかに不自然なソンジュンの行動に、ユニとヨンハは笑いだした。
ユニは、ソンジュンが酒をねだっていると思って。ヨンハは、ソンジュンの幼い態度に。
「そんなに飲みたいの?」
ユニはソンジュンの隣にもう一度腰をおろし、碗の半分まで酒を注いでやった。
「これだけだからね?」
「テムル、さっきから男に戻ってるぞ」
「そんなこと言ったって、無理ですよ。ね、コロ先輩?」
小首を傾げて応援を頼むユニは可憐な少女そのもので、止まっていたジェシンのしゃっくりが、再び始まってしまった。

コロ先輩に甘えるな。

ソンジュンは、酒を一気に飲み干し、大きな音を立てて碗を置いた。
「キム・ユンシク、僕との約束を忘れたのか?」
「女の格好をしない約束?」
「そうだ」
ソンジュンがユニの背中を強く押した。
「うわっ」
鼻先が床に付かんばかりの位置まで押し付けられ、ユニは抗議した。
「だって、僕は君が・・・」

君のそばに妓生が寄り添うなんて、我慢できなくて。
ユニは本音を飲み込む。

「僕がどうしたんだ?」
「・・・妓生は好きじゃないと思って」
「そんな心配はしなくていい」
ソンジュンの手に力が入った。

キム・ユンシクのこんな姿を誰にも見せたくない。
どうして、君は僕の心を掻き乱すんだ。
君の白いうなじは、本物の女人のもののようじゃないか。
声までなんだかいつもよりも可愛らしくて。
僕の手の下の背中も、柔らかくて・・・。
・・・ああ、そうではない。
キム・ユンシク、成均館の学士がこんなことでどうする。
僕は、君の友人として、友が道を誤らないように・・・

「・・・約束は守ってもらう。下を向いているんだ」

女人の姿をした学士が、他人の目に触れていいわけがない。
そうだ。それが道理だ。
だから、コロ先輩に微笑むキム・ユンシクに、腹を立ててしまうんだ。

「こんな姿勢、無理だよ!」
ユニは、ソンジュンの手を押しのけた。
ずれたチョゴリを直し、ソンジュンを睨む。
「今夜は、酔っ払っても絶対助けないからね!」
ヨンハは苦笑いで二人を見つめた。
ソンジュンの反応は予想以上だった。
ソンジュンがジェシンに対し、ここまで対抗心を丸出しにするとは思っていなかったのだ。
強く押さえつけられたユニは、蒸気した頬が赤く染まっている。
ジェシンのしゃっくりは、ますます止まらない。
息苦しくなり、ジェシンは立ち上がった。
「厠に行く」
どすどすと音を立てて、ジェシンは出て行った。
「じゃあ、俺も、馴染みの妓生に挨拶してこようかな」
片目をつぶり、意味深な笑顔を二人に振りまき、ヨンハも出て行ってしまった。

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【作品名】その唇が誘うから

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  花の四人衆  一ヶ月感謝企画  ソンジュン×ユニ 

2014/01/31 Fri. 19:18  tb: 0   コメント: 0

【成均館 二次小説】その唇が誘うから - 5 (感謝企画)  

成均館スキャンダル連載

冷めてしまったが、目の前には豪華な食事が並んでいる。
急に静かになった空間を埋めるのに、食事は会話より手っ取り早いと、ユニは思った。
それに、少しばかりのいたずら心も頭をもたげている。

こうなったらいっそ、腹をくくろう。
ソンジュンに綺麗だと思われたい。
ヒョウンよりずっと、魅力的だと。

「少し食べたほうがいいんじゃない?」
「・・・そうだな」
ソンジュンが使おうとした匙をユニが奪った。
空きっ腹だとお酒が回りやすいし、君は本当に重たいんだよ。そんなことをブツブツ言いながら、ユニは汁物をすくう。
そして、にっこり笑うと、匙をソンジュンの口元に運んだ。
「イ・ソンジュン様、召し上がれ」
可憐な少女か、はたまた妖艶な妓生か。
男らしさを欠片も持ち合わせない、自分に体を寄せ微笑むこの人物が、果たして切磋琢磨しあう大切な友なのかどうかわからなくなってきて、ソンジュンは顔を背けた。
「キム・ユンシク、学士としての誇りはどこへ行ったんだ?」
「君って、冗談が通じないよね」
ユニは、ソンジュンに差し出していた匙を口に含んだ。
唇の端からこぼれた汁を舌で舐め取り、今度は、同じ匙で蛸の煮物をソンジュンの口元に運ぶ。

君が使った匙で、食べろというのか?
頭がおかしくなりそうだ。

ソンジュンは、自棄になって蛸を口に入れた。
その後に口の汚れをユニに拭われ、ソンジュンは、もう、何を言えばいいのかの判断もつかなくなった。



「お酒は足りてますか?」
扉の向こうで声がした。おそらく先ほどのエンエンだろう。
この状況をユニの言う「冗談」と捉える余裕などないソンジュンにとって、エンエンの声は天から降って来たも同然だった。
しかし、彼女をこの部屋に入れるわけにはいかない。
「十分ありますから、結構です」
ソンジュンはこれで済むと思ったが、残念ながら、先ほどの天の声は全くもって天の声ではなかった。
「ク・ヨンハ様から頼まれましたので、失礼しますね」
エンエンが酒を持って入ってきた。
ユニは、エンエンに背を向け俯いた。
牡丹閣でユニは有名人だ。こんな格好を見られたら、どんな騒ぎになるのか想像するだけで恐ろしい。
「妓生はいないと聞いてましたけど、お呼びになってたのね」
卓子に近づくエンエンに気付かれまいと、ユニは背中を丸めた。
「後は僕がやります」
ソンジュンの制止も無意味だった。
「イ・ソンジュン様にこんなこと頼めませんわ。ねぇ、手伝ってよ」
エンエンはユニに刺々しく声をかけた。
それでも硬くなって動かないユニを、彼女はまじまじと見つめた。
「・・・あなた、誰?」
振り向かせようと、エンエンがユニに手を伸ばす。

不味い!

ソンジュンは、ユニを引き寄せ、腰を抱いた。
腕の中のユニが身じろいだが、ソンジュンは力を緩めない。
「今夜は、もう結構です」
「イ・ソンジュン様ったら、遊び慣れてらっしゃるのね」
世間の噂とは違うソンジュンの大胆な行動に、エンエンは驚いたようだ。
しかし興味が勝ったのだろう。卓上を整えてから下がります、と、新しい碗をゆっくり並べ出した。

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【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  花の四人衆  一ヶ月感謝企画  ソンジュン×ユニ 

2014/02/01 Sat. 19:08  tb: 0   コメント: 0

【成均館 二次小説】その唇が誘うから - 最終話 (感謝企画)  

成均館スキャンダル連載

ユニはソンジュンを押し返そうとした。
ソンジュンは、少しでも距離を作ろうとするユニのうなじを左手で押さえて彼女の頭を自分の右肩に乗せると、ユニの耳に口を寄せ囁いた。
「このままで」
観念したのか、ユニはおとなしくなった。やり場のない両手をもぞもぞと動かしている。
エンエンは見慣れない妓生がいることに納得がいかず、遠慮もなく覗きこもうとした。
焦ったユニが、ソンジュンの首に抱きつく。
「エンエン、わかるでしょ?早く行って」
ユニは正体を知られないように小声を出したつもりだったが、その声は震え、艶かしい内容と相まって、本当にこの後の営みを待ち望んでいるかのように聞こえた。
ソンジュンの心臓が跳ね上がる。
首にかかるユニの吐息は、容易に行為を連想させた。
エンエンに見られまいと腰を抱く腕も、庇うようにうなじに乗せた手のひらも、まるで心臓になってしまったかのように、どくどくと波打つ。
ソンジュンは、エンエンが出ていくまで、息をこらしてユニを抱きしめた。



エンエンが退くと、ソンジュンはわざとらしい咳払いをして、ユニを開放した。
「あの、ありがとう」
「君も、蔵で僕を助けてくれたから」
「あ、あぁ、そうだったね」
ユニは、ソンジュンを押し倒したことが如何に大胆な行動であったかを、今更ながらに理解した。
二人とも、大して崩れてもいない服をしきりに直す。
「紅が・・・」
ソンジュンが襟元で手を止めた。
白い襟に赤い紅がべっとりと付いていた。
「ごめん!僕の不注意だ」
ユニは布巾で襟を押さえたが、紅は広がるばかりで、落ちる気配はない。
「大丈夫だ。もう、いい」
ソンジュンがユニの手を掴む。ユニの手をどけるだけ、ただそれだけのつもりだったのに、ソンジュンはユニの手を離せなくなった。
目の前に、翻弄され続けた唇が迫っていたから。
ソンジュンは、その唇に顔を寄せた。



君は甘い匂いがする。

それに、君の唇は、どうしてこんなに気持ちよさそうなんだろう。

さっき君がしたように、僕の舌で君の唇をなぞってしまいたい。

こんなに顔を近づけているのに、キム・ユンシク、君はなぜ逃げないんだ。

きっと僕たちは酔っ払ってるんだ。

だから、唇を合わせたくなって・・・あと少し近づけば君の・・・



「お邪魔かな?」
いつの間に戻ってきたのか、部屋の入口にヨンハが立っていた。
ソンジュンは勢い良く立ち上がる。
いつもなら色々と詮索してくるヨンハは、珍しくあっさりと帰り支度を始めた。
「コロはどこかに行っちゃったし、俺たちも帰ろうか」
ユニは、弾けるように続き部屋に逃げ込んだ。
ヨンハは扉がピシャリと閉められたのを確認して、扇子でソンジュンの襟をトントンと叩いた。
「お前のことを堅物だと思ってたけど、こういう色っぽいのも、案外似合うな」
ソンジュンに耳打ちする。
「こ、これは、理由があって!」
「根掘り葉掘り聞き出すほど、俺は悪趣味じゃない」
「先輩、そうではなくて」
「『そう』ってなんだ?俺は何も言ってないよ」
なんとか説明を聞いてもらおうとソンジュンが躍起になっている間に、ユニの着替えが終わり、三人は牡丹閣を後にした。
成均館までの道を歩きながら、ユニは上ずった声でソンジュンに話しかけた。
「すっかり遅くなっちゃったね。僕、勉強するつもりだったのに」
「そうだな。僕も『大学』を読んでいる途中だった」
「帰ったら勉強しようかな」
「僕も続きを読むつもりだ」
ソンジュンは、ユニと普段通りの会話をしている間に、なんとかいつもの調子を取り戻した。



成均館の門をくぐりヨンハの部屋の前まで来ると、今夜はヨンハに翻弄されたからお礼を言うのもおかしい気がしたが、二人とも謝意を述べた。
中二房では、ジェシンが寝転がっていた。
「帰っていたんですね」
ソンジュンが挨拶をする。ユニも一緒に頭を下げた。
しばらくの間、ジェシンは面倒そうに、文机を準備する二人の様子を眺めていたが、ソンジュンの襟の汚れに気付き勢い良く起き上がった。
ソンジュンの胸ぐらを掴む。
「これはなんだ?」
「あ、それ、僕が付けてしまったんです」
ユニが慌てて間に入り、弁解する。
「はぁぁ?カラン、お前まさか!!!」
ソンジュンはジェシンを無視した。
説明の付かない友人への欲求を、どう話せというのか。
「先輩、イ・ソンジュンは僕を助けて・・・うわぁ!」
ジェシンがソンジュンを投げ飛ばした。
ソンジュンは、投げ飛ばされた体勢のまま、なんとか場を収めようと懸命なユニを見つめた。
ユニは、牡丹閣での出来事などなかったかのように、いつもと変わりがない。

やっぱり、酒のせいだ。

ソンジュンはもう牡丹閣でのことは忘れることにして、ユニと一緒に、暴れるジェシンを押さえた。
この夜の中二房は、いつまでも騒がしかった。

-- -- -- --
本日で連載終了です。
お題「女人姿のユニに、魂を抜かれるソンジュン」「手を握ってしまうジェシンに嫉妬」「他の人に見せまい・渡すまいと嫉妬メラメラ」を盛り込めていたでしょうか。
6日間、お付き合いいただきまして、ありがとうございました。




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【作品名】その唇が誘うから

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  花の四人衆  一ヶ月感謝企画  ソンジュン×ユニ 

2014/02/02 Sun. 18:48  tb: 0   コメント: 8

【成均館 二次小説】手をつないで - 1(感謝企画)  

成均館スキャンダル連載

ソンジュンとユニは、大科に一発合格し、成均館を卒業した。
もちろんソンジュンは、大方の予想を裏切らず、壮元(首席)だった。
彼は、大科の前に、僕だって皆と同じで怖い、と珍しく青白い顔で漏らしていた。
しかし、ユニ以外誰もこの発言を取り合わなかったというのが、実際のところだ。
目出度く二人とも合格すると、続いてキム家の悩ましい事情に直面する必要に迫れれたのだが、合格の知らせを待ち構えていた王が、あっさりと権力で解決してしまった。
彼はまず、ユニの弟ユンシクに、キム・ユニョン(金允賢)という新しい名前を与え、キム家の戸籍を書き換えさせ、知り合いがいない土地のほうが煩わしくない、と新しい住居まで用意した。
処理を一任されたチョン博士が、ソンジュンとユニを成均館に呼び出し「ユニ、君の家の子供は、ユニ、ユンシク、ユニョンの三人になった」と伝えたのは、戸籍の書き換えが完了した後で、二人はあんぐりと口を開ける以外、すべき事は皆無だった。
かくして、ソンジュンは長女のユニと結婚し、ユニ扮するユンシクは、ソンジュンと共に成均館で後継者の育成に努め、ユンシク扮するユニョンは、新しい家で勉学に励んでいる。



実は、戸籍の書き換えよりも、夫婦が成均館で官職を得るという決定に至るまでが、一騒動だった。
正式に出仕する前に、まず、研修期間がある。
分館と言って成均館、承文院、校書館、三つのどこかに権知(研修生)として配属されるのだ。
ユニの分館は馴染みのある成均館で。
これは満場一致の意見だったので、つつが無く処理された。
その後もしばらく成均館で過ごすことを見越しての決定だった。
ソンジュンも成均館を割り当てられたので、権知の間は、平和だった。
問題は、分館が終わり、正式に官職に就く段階で起こった。
ソンジュンが成均館に行くと言い張ったのだ。
この若さで壮元で一発合格するなど、朝鮮王朝の歴史の中で、殆ど聞いたことがない。
それほどの秀才が、教育者として日々のんびり過ごすなんてことになれば、王やイ家だけの問題ではなく、両班を巻き込む大騒動になりかねない。
科挙の存在意義までもが疑われる、というものだ。
当然、王も、成均館ではなく、自身に近い奎章閣(*)に配属させるように、手を回した。
にも関わらず、ソンジュンは、周りの雑音を一切無視し堂々と固辞した。
傍にチョン博士がいるから奎章閣に行ってくれ、とユニが取り成したのに「君の大丈夫ほど当てにならないものはない」と取り付く島がない。
代わりにチョン博士が諌めれば、「僕は妻の安全に責任があります」と、まるでチョン博士では力不足だと言わんばかりに頑なだった。
「どこに出仕したって、男だらけだよ」
「だから、僕は君の行くところに行くと言っているんだ」
「これは命令だよ?希望なんて出せるわけないじゃないか。君に断る権利なんかないよ!」
ソンジュンは、相変わらず男言葉を話すユニを憎々しげに睨み「壮元なんか、ならなければ良かった」と吐き捨てた。



ソンジュンは、壮元を勝ち取るために、血の滲むような努力をした。
誰も取り合わなかった「僕だって怖い」も、押し寄せる不安の中で、やっと絞り出せた本音だった。
父、イ・ジョンムとの約束でユニを娶ることは決まっていたものの、父は、ユニが男装を解き、妻としてイ家を取り仕切ることを条件にしていた。
ユニはその条件を静かに受け入れて、朗らかに花嫁修業に入った。
ソンジュンが何度問うても、あなたの妻として生きる以上に幸せなことはこの世にない、と微笑むだけだ。
彼女が外に出れば、他の男の目が気になってやきもきするのは必至・・・寧ろ経験済みであるが、一日中彼女を閉じ込めるなど、ソンジュンには想像もできなかった。
男たちに混ざり、生き生きと論を戦わせる彼女しか、知らないからではないか。
そう自問もしたが、その姿を愛したのは、他でもない自分自身だ。

壮元で合格したら、好きにさせて欲しい。

いくら自慢の息子でも、初めての大科で壮元を勝ち取ることは不可能だ、そう判断した父は、快く承諾した。
我が子の華々しい快挙を祝福され、苦虫を噛み潰したように渋い顔で礼をして回った親は、こちらも、長い歴史の中で、この父ぐらいだろう。



ソンジュンは、最終的に王のもとに乗り込み直訴した。
「坊ちゃまが、お一人で宮殿に向かわれました」
スンドリから報告を受け、イ・ジョンムが肝を冷やす思いで駆けつけた時、王は大声で笑っていた。
ソンジュンが、成均館の配属でなければユニも出仕させない、と言い切ったからだ。
「イ・ソンジュンは、私を脅すのか」
イ・ジョンムは、あまりの出来事に言葉にならない声を漏らし、我が子の無礼を許してくれ、両班の説得は自分が責任をもって請け負うから、と平身低頭した。
「左議政、心配するな。そなたの息子を悪いようにはしない」
王は、彼を帰すと、ソンジュンに向き合った。

一年間だけだ。

それだけ告げて、ソンジュンが成均館の官職を得ることを、許してくれた。

*奎章閣・・・国王が信任する文官を集めて文献研究や政策立案などを行った官庁


-- -- -- --
一ヶ月感謝企画アンケート 3位 「ソンジュン×ユニ 卒業後」の小説です。




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【作品名】手をつないで

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  一ヶ月感謝企画 

2014/03/04 Tue. 19:49  tb: 1   コメント: 7

【成均館 二次小説】手をつないで 短歌  

成均館スキャンダル連載

二次の先輩、阿波の局様が、現在連載中の「手をつないで - 1」に、素敵な短歌を寄せてくださいました。
↓↓皆様、ぜひぜひご訪問を。
その姿を愛したのは、僕

ネタバレになるので詳細は避けますが、私の力量では至らなかった、ソンジュンの心を深く表現されていて、素晴らしすぎます。
阿波の局様、ありがとうございました。
soytea、嬉しすぎて興奮状態です。




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【作品名】手をつないで

【テーマ】 一ヶ月感謝企画  成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ 

2014/03/05 Wed. 20:36  tb: 0   コメント: 2

【成均館 二次小説】手をつないで - 2(感謝企画)  

成均館スキャンダル連載

博士として成均館に通いだしてから二ヶ月がたったある日の夕方、ソンジュンの父イ・ジョンムが、ユニだけを屋敷に呼びつけた。
ソンジュンは普段、彼女と共に帰途につくのだが、今日はやり残した仕事を処理するために、彼女だけ先に帰していた。

その隙に。

ジョンムにそんなつもりは毛頭ない。
嫁を呼び出すのに、息子の顔色を窺う親がどこにいるだろうか。
しかし、こうも頃合い良くユニを呼び出されては、「その隙に」という言葉が口をついて出てきても、致し方あるまい。
ソンジュンは帰宅するや否や、博士の服装、鶴氅衣(ハクチャンウィ)のまま、ユニの部屋に向かった。
「僕も一緒に行く」
「私だけ呼ばれてるの」
「父上は、納得していないんだ。何を言われるかわからない」
「一人で平気よ」
ソンジュンが部屋に入った時、ユニは彼の剣幕には目もくれず、少し伸びた髪を飾る細布(テンギ)を選んでいた。
若草色の細布にするか、桜色に刺繍の入ったものにするか、真剣に悩んでいる。
以前、チマ姿の彼女が、短い髪を恥ずかしがっていたことを、ソンジュンはよく憶えている。
博士の幞巾は、儒生時代の儒巾(ユゴン)のように透けないため、髷(サントゥ)が大きくなっても誰もわからない。
だから、伸ばし始めたのだろう。
そうと打ち明けられたわけではないが、満更でもなさそうな彼女が可愛らしくて、彼は彼女に接吻をした。
「気をつけて」
「まるで、お義父様が恐ろしい怪物みたいな言い様ね」
高潔な鶴氅衣が白粉で汚れてしまいそうで、ユニはソンジュンの腕からするりと抜け出した。



ユニがジョンムの部屋に到着すると、彼は息子の様子を聞き出したりせず、即座に要件を切り出した。
質実なところは、ソンジュンとそっくりだ。
何度も嫁としてジョンムと接しているうちに、彼に対するユニの警戒心は薄れていた。
我が父のことを思うと、無邪気に義父を慕う気にもなれない。しかし、ソンジュンがこの世に存在するのもまた、この義父に起因する。
こんな風に、こっそり夫に似ている部分を探るのは、愉快だった。

巻き毛のようにくるりと上を向いた睫毛も、そっくり。

ジョンムは、僅かに笑みを浮かべるユニを咎めて、話を続けた。
曰く、
『私が息子の成均館務めに協力したのは、奎章閣入りを阻止したかったからだ。
私が奎章閣撤廃のために動いていたのは、知っているだろう?
あの王は蕩平などと張り切っているが、私は認めていない。
それは、息子にも既に話してある。
相避制度(*1)があるから、お前は奎章閣入りにならないだろう。
だが、今上は何をしでかすかわからない。万が一辞令が来ても、決して受けるな。』



「それだけ?」
門の前で、ユニの帰宅を今か今かと待ち構えていたソンジュンは、ユニが輿から降りるなり、如何に責められたのか問い詰めたのだが、報告を聞いて拍子抜けしてしまった。
ユニが『あの王』のくだりは随分憎々しげだったと加えると、彼は珍しく声を出して笑った。
屋敷に向かって歩きながら、ユニは改めて礼を言った。
「ありがとう。本当は私が出仕したいって、わかってたんでしょう?」
「その話は何度も聞いた」
「正式な官職についてからは、まだ、ありがとうって言ってなかったから」
ユニは、ソンジュンの言う通り、何度も彼に感謝の言葉を尽くしてきたが、それでもまだ伝え足りなかった。
彼の英断がなければ、ユニは、一生家の中に閉じこもっていただろう。
一度知ってしまった新しい世界から去らねばならない、と聞かされた時、足が竦んだ。
その道・・・女人としての人生、に自分自身を乗せるという決断を下すことは、途方も無い勇気を要した。
左議政の息子に嫁ぎ、何不自由ない生活を約束され、何と言えば周囲を説き伏せられただろう。
成均館入学の時は、家族を養うという大義名分があった。
けれど、今は違う。
毎夜、それこそ『頭が割れるほど』考えたが、女が官職を得るべき理由なぞ、思い浮かばなかった。
いつか機会を見て、外に出よう。
そう誓ってみたものの、来るかもわからない「いつか」に期待すること自体、絶望的だった。
ユニは、内訓(ネフン)(*2)の文字を辿りながら、人知れず、すすり泣いた。
ソンジュンに導かれて入ったこの世界は、魅力的過ぎた。
初めは不本意だと彼に怒りをぶつけたが、すぐに虜になった。
一人で読書をしていた頃、書物はユニの好奇心を大いに刺激してくれたが、由緒正しい畏まった書物を敬う形で、読み進めているだけだった。
ところが、成均館で書を開くと、堅苦しい漢字の羅列すら、一字一字が春の野のように色を纏って踊りだし、彼女の思考は、渡り鳥の如く、自由にどこまでも遠く羽ばたいた。
官職を得たい。亡き父の夢見た朝鮮を作りたい。
それは、男たちの野望とは異なるものだ。
何故なら、この叡智に満ち溢れた世界が、彼女の命だったから。
去ることになれば、成長が止まってしまう。
世の中から置き去りにされる。
これほどの恐怖があるだろうか。
ソンジュンは、二度も彼女を恐怖の縁から救ってくれたのだ。
兵曹判書の妾にされそうだった時。そして、今。
「私のせいで、あんなに辛い大科になっちゃったじゃない」
「壮元を狙ったのは、僕の将来のためだ」
「嘘ばっかり」
嘘じゃない。ソンジュンは、照れくさそうにそっぽを向いた。

*1 相避制度・・・姻戚関係にある場合、同じ官庁に所属させない制度
*2 内訓・・・身分の高い女性の礼儀作法を教える書物





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【作品名】手をつないで

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  一ヶ月感謝企画 

2014/03/06 Thu. 19:02  tb: 0   コメント: 0

【成均館 二次小説】手をつないで - 3(感謝企画)  

成均館スキャンダル連載

ユニの指摘通り「将来のための壮元」は全くのでまかせだった。
壮元を勝ち取るという賭けは、当たれば相当な説得力を持ち得るが、確実性という面では、甚だ心許ない。
だから、万一に備え他の切り札も用意していた。
あの父のことだ。
先陣を切って蕩平組の仲間を募る、とでも言えば、折れただろう。
ソンジュンにとって、僻派(ピョクパ)(*)を牽引するなど論外で、現在の僻派の巨頭である父は、そのことを嫌というほど知っていた。
さりとて、王の本腰の蕩平策に組み入れられて、彼の手先になるつもりも皆無だった。
民に仕えたい。
人は高尚過ぎると笑うが、嘘偽りない、ソンジュンの信じる道だ。
「私に合わせて、成均館に来ちゃったわね。この先が心配だわ」
大司成(テサソン)が、いつになったら中央に帰れるのか!と事あるごとに嘆いているのを鑑みても、成均館の博士が出世から程遠い官職であることがわかる。
「僕は、成均館の博士に甘んじるつもりはないよ」
ソンジュンにも野心はあった。
それは、一般的な自己顕示欲とか権力欲とか、それらとは性質を異にするが、己の理想とする朝鮮を作るには、やはり、然るべき地位と力が必要だ。
漢城では、相避制度のことを忘れているのか、次の辞令で花の四人組が奎章閣に行くともっぱらの噂で、さながら規定事項のように、人々の口から口へ語られていた。
奎章閣は、今上が作った官庁で、その成り立ちから伺えるように、王に直結している。
そこで、選りすぐりの秀才たちが王の頭脳と成り代わり、文献研究や政策立案を行っていた。
だからこそ、イ・ジョンムは撤廃に躍起になっていたのだが。
彼は、絶対に奎章閣は許さないと息巻いている。
しかし、噂通りなら、ソンジュンだけでなく、ジェシンやヨンハにも同時期に辞令が飛ぶだろう。
ソンジュンは、父がなんと言おうと、相避制度という煩わしい法律を乗り越えて、二人で奎章閣に行くつもりだった。
権力の頂点に近いところで、政治に携わる。
これは、願ってもない機会だ。
「それに、成均館の博士も悪くない」

僕らが力をつけた時、今の儒生たちも出仕している。
彼らは出世頭だ。
彼らに慕われれば、将来、彼らは僕らの力になるだろう。
上と懇意になるばかりが政治じゃない。
だから、君も、成均館で君の理想を説くんだ。

ソンジュンは、ユニのために自分を犠牲にしたわけではないと、慎重に言葉を紡いだ。
因習や周りの思惑に押され、二人の人生がなんとなく過ぎていくのを、指を咥えて眺めるのは嫌だった。

僕は、諦めない。

「旦那様、奥様」
長話に音を上げたスンドリが、手を揉みながら、声をかけた。
二人は、ユニが輿を降りた時、すぐに夕餉を取るよう彼に言われてことを思い出し、話に夢中になりすぎて止まっていた足を、再び前へ動かした。



ソンジュンの妻となって半年経つが、ユニは未だに豪華な食事に慣れていなかった。
もっとも、この屋敷の主は誰もが認める廉潔な男だったから、両班としては随分質素な食事なのだが、慎ましい生活をしていた彼女には、目の前に並べられた数々の皿は十分豪華だった。
食事毎に、膳を運ぶ侍女に、今日もとても美味しいわ、と礼を言っている。
「そうだ。ユンシクに話があるんだ」
「それなら、明日、ここに呼ぶわね」
「いや、お義母上も心配だし、明日ふたりで出向こう。それより、今日一緒に読んだ『中庸章句』だけど・・・」
傍らで控えていたスンドリが、口を挟んだ。
「またですか!食事中に小難しい話はやめて下さい。もっと楽しく召し上がってくださいよ」
「僕らはこれが楽しいんだ」
スンドリが、やれやれと首を振った。
「博士様のお世話は退屈だ」
* 僻派・・・老論中心の派閥




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【作品名】手をつないで

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  一ヶ月感謝企画 

2014/03/07 Fri. 17:45  tb: 0   コメント: 2

【成均館 二次小説】手をつないで - 4(感謝企画)  

成均館スキャンダル連載

次の日は成均館の休日だったので、ソンジュンとユニは、ユニの実家を訪れた。
「結婚した娘が戻ってくるなんて、あってはならないことよ」
男装で来たから心配する必要はないと、ユニは母の手を握ったが、彼女は首を横に振るばかり。
ソンジュンがユニの後を引き取り、慰めるように言った。
「僕たちは、父と別に住んでいますから、イ家のことなら気になさらないで下さい」
そもそも、それがあってはならないことだと、ユニの母は頭を下げた。

イ家の長男が、継ぐべき屋敷を出たことは、まさしく伝統破りだった。
しかし、左議政の屋敷は要人の出入りが多く、また、親戚も頻繁に訪ねてきていたから、彼らに、嫁の弟ユンシクが屋敷に通っていると誤解されるのは、イ家、キム家両家にとって都合が悪かった。
対して、殆ど使われていなかったイ家の別宅へ、ましてや官吏になったばかりのソンジュンを訪ねてくる者は少ない。
苦肉の策だが、ユニの官職に付随したこの腹案は、珍しく父のイ・ジョンムも同意見だった。

ユニは、話題を変えるために、傍らのソンジュンの肩を叩いた。
何度も繰り返されたこの話題を続けることは不毛だ。母には申し訳ないが、何も変わらないのだから。
「ねぇ、イ・ソンジュン。ユンシクに話があるんでしょ?」
「まあ!!!」
卒倒しそうになる、と良く言うが、このとき母は本当に卒倒しかけた。
「そんな呼び方をして!左議政様に顔向け出来ないわ」
「じゃあ、イ博士・・・?」
ユニにとって、男装の時は、男同士の呼び方の方がしっくり来る。
しかし、すかさず母の怒号が飛んだ。
「旦那様よ!」
その剣幕に二人が後退りするほど、母は激怒した。
いつもならユニを庇うソンジュンも、圧倒されている。
「母さん、義兄上を中に入れてあげようよ」
見かねたユンシクが、母の肩を抱いて、台所に連れて行く。
ユニどころか何も悪くないソンジュンまで、居間に小さく腰掛けた。



ユンシクは義兄の訪問を心待ちにしていた。
二人の屋敷を訪ねる時もそうだが、ソンジュンは、いつでも、一人で学問を続けているユンシクの質問に快く答えた。
姉のお下がりの書巻は、彼女の端書きで真っ黒で、彼は姉の端書きが何を言わんとしているのかも教えてくれた。
そして、次は何を読むべきか示し、簡単な講釈も加える。
彼は、ユンシクとって義兄であると同時に師でもあった。
今日もユンシクは書物を用意して待ち構えていたのだが、義兄は、ひと通りの挨拶を終えると、ユンシクの将来について切り出した。
「月出山(ウォルチュルサン)にイ家馴染みの書院(ソウォン)(*)があるんだ。造詣が深い儒学者もいるし、風も水も清らだ。一人で書を読み進めても煮詰まってしまうから、そこで本格的に学問を深めないか」
「月出山?」
茶を卓子に並べていたユニが身を乗り出した。
「うん」
二人は何も言わず微笑み合う。
「姉さん、知ってるの?」
「うん」
姉は、義兄から視線を外さず、頷いた。
こんな風に、新婚の二人は時々前触れもなく微笑み合う。
身の置き場のないユンシクは、書物をパラパラとめくった。
台所仕事を終えた母も卓につくと、ソンジュンはもう一度ユンシクを説得した。
官吏としての将来を考えると、儒学者に付いて学ぶのは遅いぐらいだから、すぐに行った方がいい、というソンジュンの意見は一理あった。
ユンシクの体調は快方に向かっているが、成均館で学ぶのはまだ無理だ。
兵曹判書の罪が明るみになったのを契機に、寡婦であるユニの母には、温情と称し、生活費が支給されていたから、彼女の生活は心配ない。
結局、ソンジュンの世話になるのは気が引ける母と弟が、少し考える時間を持つ、という結論で落ち着いた。



その後も四人は楽しく過ごし、日が落ちてから帰途についた二人は、ソンジュンの部屋のある舎廊棟(サランチェ)の前で、立ち止まった。
「僕の部屋に来ないか?」
「明日の講義の準備があるの」
新米の二人は、比較的初歩の授業を割り当てられていた。
だから、さほど難しくないのだが、その手のものは、内容に反比例して説明が難解になりがちだ。
ユニは、儒生たちに、腹に落ちる講義をしてやりたかった。
「中二房が懐かしいわ」
「結婚した今より、あの頃のほうが一緒にいた気がするよ」
「ここにはコロ先輩とヨリム先輩みたいに、あなたを止める人がいないわね」
「それだけが幸いだ。あとで君の部屋に行くよ。湯を浴びておいて」
「準備をするって言ったでしょ?」
ユニが、仕事とソンジュンを天秤にかける時、ソンジュンは度々敗北感を味わった。
けれど、今夜のユニは、言葉とは裏腹に、口元に微笑を浮かべた。

*書院 両班などの資産家が先生を招き、主に自身の子や親戚を教育した場所






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【作品名】手をつないで

【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  一ヶ月感謝企画 

2014/03/09 Sun. 15:55  tb: 0   コメント: 2

【成均館 二次小説】手をつないで - 5(感謝企画)  

成均館スキャンダル連載

ソンジュンは、数冊の書物を持って内棟(アンチェ)の階段を上がった。
揺らめくろうそくの灯火が、障子扉に、寝転んでいるらしいユニの影を映していた。

余計な小細工をする必要はなかったな。

手元の書物に目を落とし、ソンジュンは微笑した。
彼は緩んだ頬を自覚し、口元を引き締めてから扉を開けた。
瞬間、彼は己の目を疑った。
確かにユニは布団に横たわっていた。ただし、書物を布団に持ち込んで。
「君は僕を生殺しにしたいんだな」
「私は明日の講義の予習をするって言ったはずよ?」
「いや、君は僕を苦しめるつもりだ」
彼女は、下着姿で、布団の上に俯せて本を読んでいた。
下着姿!
ソンジュンは、天井を仰ぎ見て呻いた。
「僕は何をすればいいんだ?」
「読書」
彼女の体を覆っているものは、上衣のソッチョゴリと下衣のソッチマだけで、ソッチマの下に身につけるべきソッパジ(*)も着ていない。
絹のソッチマは、腰の柔らかい曲線に添って、ユニの肌の上に垂れている。
絹よりも白くてつるりと艶のあるふくらはぎが、ソッチマから覗いていた。
彼女は、ソンジュンが隣で横になれるだけのゆとりを設けていたのだが、彼は床に寝転がって持ってきた本を開いた。
そらんじることが出来るほど気に入った一節も、今は味気ない漢字の羅列だ。
固い床板が肩甲骨にあたり、当然のことながら寝心地も悪い。
しかし、体の奥に生まれた熱をやり過ごすには、これぐらいが良かった。

何もせずにユニの隣に寝転んで読書なぞ、正気の沙汰ではない。
……正気なら読書は可能なのだから、正気の沙汰ではない、という表現は間違っているのか?
いや、些細な言い回しに頭を悩ませている事自体、どうかしている。

いよいよ、正常な思考さえ蝕まれ始めたようだ。
ソンジュンは、大きく息を吐きだした。
「君ほど酷い女人を僕は知らない。妖婦みたいに僕を煽って、聖人君子の如き振る舞いを求めるんだから」
「んー……」
「愚痴も聞いてくれないのか」
ソンジュンは、ユニの手のひらで踊らせされている事実が、無性に腹立たしくなった。
スンドリに「僕の想いがあり余る」とこぼしたことがある。
男としての欲が彼女のそれよりも強いことは重々承知だが、想いも依然、自分のほうが多いのだろうか。
もちろん、彼は、この関係を勝ち負けで推し量ることがいかに愚かか、理解している。
しかし、それは理屈だ。
こんなふうに弄ばれて、湧き上がる感情を否定することが、どうして出来ようか。
彼は起き上がり、彼女の手の中にある本を取り上げた。
「儒生たちが、君をどんな目で見ているか、知っているのか?」
言った瞬間、ソンジュンの顔が歪んだ。
失言だった。
二人の戯れには何ら関係のない、儒生への嫉妬。
彼らに笑顔を振りまく、ユニへの憤り。
醜い感情を露呈させてしまい、怒りが矛先を変え、ソンジュンに向かった。
彼は、次の言葉が続かず、黙り込む。
眉を寄せ、苦々しげに拳を握った。
「男同士じゃない」
「それでも……!」
ソンジュンは、ユニに馬乗りになった。
たまらなかった。
男だと信じてなお、彼は彼女を好きになったのだから。
ユニは、人差し指をソンジュンの唇にあてて、微笑んだ。
「でも、この中を知っているのは、イ博士だけでしょ?」
言いながら、肩を押すソンジュンの右手を、自分の膝の上に置く。

完敗だ、また。

彼女はいつもソンジュンが一番喜ぶことを言って、彼を籠絡する。
彼は、途端に口角が上がる自分の単純さを自覚した。
たった今、二人の愛情の深さを比較して悶えんばかりだったのに。
「待って、まだ、慣れなくて」
ソンジュンは、ユニに覆いかぶさったまま、数冊の書物に紛れ込ませていた、赤い装丁の本をたぐり寄せた。
「……ねぇ」
「何?」
上目遣いで口も尖らせたユニが、二人の間にある本をどけろと訴えているのは明白だ。
「いつも同じじゃ、君も飽き……痛っ!」
「普通でいいわよ!バカ!」
彼女は、ソンジュンの脛を蹴っ飛ばし、本を取り上げた。
「灯りを消して?」
今夜の月は明るい。
灯りがなくとも、ユニの白く柔らかい肌を存分に楽しめるだろう。
ソンジュンは、ろうそくの炎を吹き消した。

* ソッパジ……ズボン状の下着





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【テーマ】 成均館スキャンダル二次小説  ソンジュン×ユニ  一ヶ月感謝企画 

2014/03/11 Tue. 20:03  tb: 0   コメント: 0

【成均館 二次小説】手をつないで - 6(感謝企画)  

成均館スキャンダル連載

曇り空からそろそろ雨が落ちてくるかと思われる、朝。
ヨンハが、二人の屋敷に使いを寄越した。
彼の使いの者はとても丁寧な口調だったが、要約すると『今夜、コロとお前らの家に行くから絶対に家にいろ』というヨンハらしい命令だった。
「夕餉を四人分用意してもらわないと」
ユニは、朝餉を運ぶ侍女に、食事の用意と客間の小舎廊(チャグンサラン)の準備も細々と指示した。
「布団に風を通せなくて、残念」
「朝まで付き合うのか」
「だって、雨が降るでしょ?先輩たち、帰るのが面倒だって言って寝ちゃうわよ」
二人の屋敷は、ジェシンとヨンハの、体の良い溜まり場になっていた。
一度、それぞれの勤めが終わった後、酒屋で落ち合ったことがある。
しかし、鶴氅衣(ハクチャンウィ)のソンジュンとユニ、具軍服(クグンボク)のジェシン、上から下まで綺羅びやかに光る商人のヨンハという組み合わせは、目立ち過ぎた。
周りの視線に辟易し、以来、ジェシンとヨンハは二人の屋敷に来るようになったのだ。



二人が成均館から戻った時には既に、ヨンハとジェシンは、既に小舎廊でくつろいでいた。
ソンジュンが彼らに一言挨拶をしてからユニの部屋に向うと、ユニは着替えを済ませ、髢(カチェ かもじ)を巻きつけているところだった。
「蝶の簪(コチ かんざし)をとってくれる?」
「細布(テンギ)をしないのか?」
「私が生娘の格好で殿方の前に出てもいいの?」
ソンジュンの母は、男装ばかりの娘時代を過ごしたユニを不憫に思い、家にいる時と私達に会いに来る時ぐらいは、これで髪を飾りなさい、と細布を幾つか持たせてくれた。
中には彼女自ら刺繍を刺してくれたものもあった。
本来、髪を下に垂らす髪型は未婚の女人だけに許されている。
ソンジュンの母は、ユニが若い娘らしいお洒落を禄に楽しめなかったことを、気に掛けてくれたのだった。
嫁の不適切な装いに眉を顰めそうなソンジュンの父も、未だ彼女が男として出仕しているという大事の前では、彼女の身なりなど些細な事らしく、苦言を呈することはなかった。
ソンジュンは、このことをすっかり忘れていた。
だが、確かに、ヨンハとジェシンの前で、婚前の格好をされるのは面白くない。
「……細布は禁止だ」
真紅のチマと緑のチョゴリ、幾つもの簪があしらわれた結い髪。
華やかで可愛らしい新妻が、鏡の中で微笑んでいる。
この姿を見せびらかしたいような、男装のままでいて欲しいような。ソンジュンの心中は、なんとなく、複雑だった。



ユニは、膳ではなく大きな座卓に食事を用意させていた。
儒生時代、四人で一つの卓を囲むことが多かった。
もう学士ではないが、あの頃のように気さくに盛り上がりたい。
それはジェシンやヨンハも変わらないようで、手酌の酒が進んでいた。
多弁なヨンハは、彼の商売について、扇子をくゆらせながら自慢し始めた。
「新しく売りだしたチマが好評で、妓生の流行になっているよ。テムル、今度お前にも持ってきてやろう」
「ありがとうございます。僕に似合うかなぁ……」
女人の姿をしていても、成均館時代のように、ついつい男言葉になってしまう。
ヨンハは、そんなユニを、すかさずからかった。
「おい、テムル。まさか、褥の中でもその口調じゃないよな?」
「先輩!」
盛大にむせたユニの背中を叩いてやりながら、ソンジュンは、抗議の声を上げた。




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2014/03/19 Wed. 19:17  tb: 0   コメント: 2

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